中国はもうすぐ春節(旧暦の正月、今年の元日は2月11日)の大型連休を迎える。中国政府は新型コロナウイルスの感染拡大を予防するため、故郷を離れて暮らす労働者に今年は「帰省の自粛」を呼びかけている。
そんななか、台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)の主力子会社で世界最大のEMS(電子機器の受託製造サービス会社)である富士康科技集団(フォックスコン)が、春節期間中も工場を休まず稼働させることがわかった。
フォックスコンはアップルのスマートフォン「iPhone」を受託生産していることで知られ、中国の広東省や河南省などで巨大な工場群を運営している。同社の広東省深圳市の工場が1月18日に掲示した従業員の新規募集要項によれば、春節の連休期間(公休日は2月11日から17日まで)に帰省せずに働く従業員に対して「帰省自粛手当」を支給する。
具体的には2月5日から20日までの間、除夕(旧暦の大晦日)と初一(旧暦の元日)を含む3日間の休暇を除いて毎日出勤した場合、従業員は通常の休日出勤手当に加えて2400元(約3万8448円)のボーナスが得られる。さらに、後日取得が可能な無給の「栄誉休暇」が5日間与えられる。
販売ピークの後ずれで生産が逼迫
財新記者の取材に応じたフォックスコンの関係者によれば、深圳工場では春節期間中も帰省せず出勤を選ぶ従業員が数万人に上る見込みだという。もちろん新型コロナの感染予防が理由の1つだが、「受注増加で生産が逼迫していることも関係している」と、この関係者は打ち明ける。
アップルは新型スマートフォン「iPhone 12」シリーズを2020年10月に発売した。これは例年のモデルチェンジより1カ月遅かったが、証券会社の分析レポートによれば、新型コロナの世界的流行や発売の遅れにもかかわらず販売は絶好調であり、売れ行きのピークが例年より後ずれしている。
つまりフォックスコンから見れば、iPhone生産のピークも遅れてやってきているのだ。さらにアップル以外のメーカーの新製品も発売の遅れが相次ぎ、「今年の春節はコンシューマー・エレクトロニクス産業のかき入れ時に変わった」と、前出の関係者は話す。
その意味で、政府の帰省自粛の呼びかけはフォックスコンにとって渡りに船と言えそうだ。帰省せず出稼ぎ先に残る労働者が増えることで、目下の生産逼迫がある程度緩和されることを、この関係者は期待している。
(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は1月27日
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