日本企業がやりがちな「悪いアジャイル」の克服法 短絡的な官僚組織の否定が成功の芽を摘み取る
よくある墜落・失速の原因は次のようなものだ。
(ア) 影響力のあるステークホルダーが難色を示し、プロジェクトの中断・見直しを余儀なくされる
(イ) 保守的になり承認者が増えて意思決定が遅くなり、前に進まなくなる
(ウ) アジャイルチームが既存事業の下に組み込まれ、既存事業の傘下で運営されるようになる
(エ) 顧客・現場感覚の薄い「ご意見番」が増え、マイクロマネジメントをしたり、革新性の尖りを削ぐ
(オ) アジャイルチームが縮小させられる、主要メンバーが外される
前編で、離陸成功ケースとして紹介した老舗サービス企業においても、拡大期に大きな障壁に直面した。
取り組みの本格拡大において、規制業種でもある「親会社」が保守的な懸念を示し、さらに子会社への越権行為をし、準備室が通常業務の組織に取り込まれ、重層的な報告を親会社に求められることになったのだ。
こうした内向きの重力場の復活により、スピードが落ちてしまい、世の中にサービスを打ち出すペースが鈍化してしまった。
アジャイルチームを守るための2つの方法
このステージでは以下の2つがカギとなる。
例として取り上げた老舗企業では、代表取締役の役員が「次の20年の当社とその顧客のために」と腹をくくって、ミッションに徹底することができる環境を作り、周囲の抵抗から徹底的にこの取り組みを守ったことが大きな違いを生んだ。
当該会社の経営陣は「次世代顧客への徹底的な革新性」の担保と「親会社とはけんかせず、多少スピードが落ちても、火を消さずに正しいことに邁進し続ける」ためにこの取り組みを守り続けたのだ。
この会社は多少妥協したものの、実質的な展開を続行したことで、「前例のないデジタルサービス」を正式に世の中に出すことができた。
既存事業とは切り離してアジャイルの取り組みを拡大、すなわち、専任のチーム・組織の拡大を図ることがこのステージでは求められる。
これはいわば第2の事業モデルの本格化のステージである。しかしながら、採算の時間軸が中長期かつ流動的なために、承認が硬直的になったり、「優秀な人材を既存事業から引き抜けない」ということが頻出する。