「滴滴出行」の株価暴落に映る米中金融摩擦の行方 中国の「ドル覇権打破」戦略に勝ち目はあるのか

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香港はこの数年、中国銘柄の上場を多くこなし、世界各国から膨大な資金を吸収、資金調達額ではすでにニューヨークやナスダックに引けを取らない。アメリカに上場する中国関連企業の株主はウォール街を中心にした海外のPE(プライベートエクイティ)ファンドや金融投資家で、本土の投資家は創業者と部分的な投資家に限られる。現に滴滴の最大の投資家はソフトバンク傘下のビジョン・ファンドだ。上場廃止でいちばん困るのは、このような海外投資家かもしれない。

強気の中国と妥協しないアメリカ、データの主権争い、強まる中国政府によるインターネット・プラットフォーマーへの圧力、アメリカの中国軍事関連企業への制裁など複雑に織り交ざる問題と相まって、今後は上場廃止が増える可能性は避けられないだろう。

今後注目すべきなのは以下の2点であろう

① 今まで中国で認められていた「VIE」―中国企業が規制を迂回しアメリカに上場する仕組みが、中国で「違法」との判断が出るか
② 上場廃止された中国企業に対し、アメリカ政府がアメリカ投資家に対し何らかの「投資禁止命令」を出すか

前者は、主な「中国概念株式」が採用しているスキームなので、万一「違法」になれば、理論上株式は紙切れになり、中国の対米金融戦争の「宣戦布告」を意味する。後者は、既存のアメリカ投資家の首を絞めるため、これも簡単には使えないだろう。

金融摩擦の焦点2―金融制裁

もう1つの焦点は、ファーウェイ事件に見る「安全保障に関連する問題」やウイグル、香港の「人権問題」などから発する中国企業への「金融制裁問題」だ。

金融制裁で懸念されるのは、「制裁報復合戦」のエスカレートだ。保有国債放出、金融資産の凍結、全面的な対銀行や企業のドル決済システムよりの排除等に進めば、世界経済は大混乱に陥る。そうなれば、第2次世界大戦前のアメリカによる日本への石油禁輸政策のように、全面的金融制裁が中国の台湾進攻などを刺激することにもなりかねない。

金融制裁は為替、送金、預金など金融のあらゆる面で企業を締め付けることを目的としているため、基軸通貨であるドルを持つアメリカが圧倒的に有利だ。この点、中国は十分に認識しており、現在中国は以下の3つの対応に徹しているように感じる。

<1> できる限り「現状維持」を堅持し、時間を稼ぐ
<2> アメリカの金融制裁が行われた場合には断固とした報復措置を施行し、アメリカの金融制裁のコストを高くし、排除する
<3> 独自の国際金融システムの迅速な構築をする
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