その膨大な金融ビジネスを支えているのがアメリカの大手金融機関だ。急成長する中国の金融市場にあやかりたいと、「新冷戦」どこ吹く風と、中国国内や香港での人員拡充に余念がない。今年に入りゴールドマンが中国最大手の工商銀行と合弁資産運用会社(ゴールドマン51:49)を設立したが、世界一金儲けの上手な投資銀行と世界最大の資金量を誇る商業銀行の「合作」は市場の注目をあびた。
ウォール街は民主党に近いと言われるが、米中金融界は相互補完関係――「チャイメリカ構造」が続いていたのである。
金融摩擦の焦点1―中国関連企業のアメリカ上場問題
今起こっている金融摩擦の焦点は何か。1つは中国関連企業のアメリカ上場問題だ。
目下アメリカには200社余りの「中国概念株式」が上場し、その時価総額は2兆ドルを超える。1990年半ばニューヨーク証券取引所に上場が始まった当初は、国営企業が主体だったが、中国経済の成長につれ、民間企業が増え、今では圧倒的に民間企業が多い。
2020年初に、新規上場したラッキン・コーヒーの粉飾が発覚し、中国の海外上場に関する会計監査制度が問題視され、昨年、投資家保護の視点から「中国企業を担当する監査法人がアメリカ当局による検査を受け入れなければ上場廃止とする」という厳しい内容の「外国企業説明責任法」が成立した。それに対し、中国政府は一貫として「外国当局の中国企業に対する直接検査は受け入れない」としている。
その矢先に「滴滴事件」が起きた。これは「中国国内のデータは一企業のデータでも、所属は国にある」(データ主権)と言う中国政府の主張により、今後海外上場する企業は、党の「中央ネット安全と情報化委員会弁公室」の厳しい事前審査が必要になった。これに対し、7月30日、SECは「中国当局による経営への干渉リスクなどを明示するよう求め」従わない場合上場を認めない方針を示した。
このようなアメリカ側の反応を十分予測しながらも、中国は強気に対応している。なぜか。筆者は、中国政府が、次の3点で判断していると思う
2)中国企業がたとえ上場廃止になっても香港や国内市場で十分対応できる
3)上場廃止をして困るのは中国よりもアメリカの投資家や金融業界
そして、これらはどれも正しい。
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