アベノミクスで財政再建は進んでいるのか 国の試算から見える、2020年度財政目標の進捗状況

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ただ、筆者の推論で言えば、昨今の税制をめぐる議論を踏まえれば、この主因は法人税と考えられる。1月試算段階では、2013年度の法人税収で自然増収がいくらになるかはわかっていなかった。

しかし、7月初旬には2013年度の法人税収が大きく上振れたことが判明した。今回の「中長期試算」では、この効果を織り込んだとしても何ら不思議ではない。1月試算では、すでに確定している税制改正は織り込んでおり、それ以降税制の変更は何も決まっていない。

なお11兆円の基礎収支赤字、聖域なき見直し不可避

もちろん、(消費税率を10%にする以上に)増税することは何も決まっていない。名目成長率が下方修正されていながらも、税収等が増えるということは、この法人税収の自然増収の度合いが大きかったことを、1月試算よりももっと大きく7月試算で織り込んだことぐらいしか、他に考えられない(しかし、これは内閣府が税目別の税収試算を公表していないために、筆者の根拠ある推論にとどまる。内閣府は税目別の税収試算を公表すべきである)。

とはいえ、それでもなお2020年度の基礎的財政収支は11兆円もの赤字であることには変わりはない。何の政策努力を追加的に行わなければ、財政健全化目標は達成できないのである。しかも、11兆円という金額は公共事業費や公務員人件費を削ったぐらいではとても捻出できない額である。

そのうえ、3.5%前後の名目経済成長率を織り込み、それに伴う税の自然増収を反映してもなお残る赤字額である。財政健全化目標を達成するためには、社会保障給付の聖域なき見直しや追加的な増税は不可避である。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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