少なくとも、これだけ見れば、7月試算は、1月試算より経済成長率が高まると修正されて税の自然増収がより多く入るために、増税をしなくても収支が改善する、という推論は成り立たない。
ところが、税収等の見通しは次のようになっている。公表されているのは、国の一般会計の分だけだが、2014年度は①54.6兆円⑦54.6兆円、2015年度は①59.9兆円⑦60.2兆円、2016年度は①65.2兆円⑦65.5兆円、2017年度は①67.2兆円⑦67.6兆円、そして2020年度は①73.9兆円⑦74.5兆円となっている。なんと、2020年度の一般会計の税収等だけをとっても、7月試算は1月試算よりも0.6兆円多くなっているのである。
「名目成長率下方修正でも税収増」の理由は不明
もちろん、2020年度だけ帳尻を合わせるかの如く、突然税収が増えているわけではない。2015年度以降、徐々に税収が増えるという見通しに上方修正されていたのである。
ちなみに、国の一般会計の政策的経費(基礎的財政収支対象経費)の試算を見ると、2020年度は1月試算も7月試算も同じ84.0兆円である。国の一般会計の基礎的財政収支は、7月試算は1月試算に比べて、税収等が増えた分と同じ額である0.6兆円改善していると上方修正されている。国と地方の基礎的財政収支が0.9兆円改善するとの結果と比べれば、地方財政の影響もありながら、国の一般会計だけでその大半の要因となっていることがわかる。
こうしてみれば、今回の「中長期試算」は、1月試算と比べると、特段の歳出削減が見込まれているわけではないが、名目成長率が下方修正されているにもかかわらず、税収等が上方修正された結果、基礎的財政収支赤字が縮小されるという様相が見えてきた。
名目成長率が下方修正されていながら、税の自然増収がより多く上がるとの見通しを示したということは、なぜなのだろうか。残念ながら、「中長期試算」として公表されている情報だけでは、その要因を細かく分析することはできない。
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