今回の試算結果は、消費税率を予定通り2015年10月に10%に引き上げ、2010年代後半に名目経済成長率が3.5%前後で推移するなら、2020年度の基礎的財政収支は、11兆円の赤字となる、というものだった。
2020年度の基礎的財政収支は赤字という試算結果は、前回の今年1月試算と同じだったが、赤字の額が1月試算では11.9兆円だったのが、今回の試算では11.0兆円と0.9兆円も収支が改善する見通しが示されたのである。
改善の主な理由は、歳出削減?それとも増収?
これだけを取れば、日本の財政の見通しにとっては朗報である。しかし、今年半年たっただけで、なぜ1兆円近くも収支改善できる見通しに変わったのかが問題である。今年半年間で、将来の財政運営にも影響を及ぼすような歳出の大幅な削減策が打ち出されたり、税収を確保できるような抜本的な税制改革が実施されたりしたなら、試算結果が変わりうる。しかし、そうしたことは何もない(消費税率の引き上げは、前回の1月試算でも織り込み済みである)。
では、経済成長による税の自然増収(税率を上げなくとも税収が増えること)が追加的に反映された結果、赤字が縮小する見通しになったのだろうか。この点について詳細に見てみよう。1月試算(以下①と表す)と7月試算(以下⑦と表す)を比べてみよう。
名目成長率は、2014年度は①3.3%⑦3.3%、2015年度は①3.4%⑦2.8%、である。さらに2016年度は①3.8%⑦3.6%、2017年度は①3.4%⑦3.4%である。そして、2020年度は①3.6%⑦3.6%である。
要するに、今回の7月試算は1月試算より、2015年度と2016年度で名目成長率を下方修正しているのである。さらに、名目GDPは、発射台となる2014年度は①500.4兆円⑦497.5兆円と、1月試算の方が高い。その結果、2020年度の名目GDPは、①616.8兆円⑦609.0兆円と、7月試算は1月試算より7兆円近く少ないと試算されている。
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