「ホロコーストの罪人」が伝える忘れてならぬ史実 大戦中ノルウェーで起きたユダヤ人迫害を映画化
ナチス・ドイツがユダヤ人などに対して組織的に虐殺・民族絶滅を図ったホロコーストは、人類が繰り返してはならない20世紀の悲劇として記憶されている。
ノルウェーでも多くのユダヤ人がアウシュビッツの強制収容所に連行され、ホロコーストの犠牲者となった。だが、その蛮行にノルウェー警察・市民ら、同じノルウェー人が加担していたという事実は長らくタブーとされてきた。ノルウェー政府がこの事実を認め、公式に謝罪を行ったのは事件から70年近くたってからのことだ。だがその時はすでに事件の生存者たちは全員亡くなっていたという。
8月27日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開予定の映画『ホロコーストの罪人』は、ノルウェーで幸せに暮らしていた平凡なユダヤ人家族がたどる悲劇的な運命を描きだした衝撃作だ。
ノルウェーで大ヒットを記録
ノルウェーでは自国の暗部を描き出した内容に賛否両論が巻き起こったというが、2020年のクリスマスに公開されるとヒットを記録した。出演は『獣は月夜に夢を見る』のヤーコブ・オフテブロ、『ソフィーの世界』のシルエ・ストルスティン、『ミレニアム』シリーズのミカリス・コウトソグイアナキスほか実力派が勢ぞろい。監督は、日本のアニメにあこがれる少女を描き、国内外で高い評価を得た『HARAJUKU』のエイリーク・スヴェンソンが務めている。
本作の主人公はノルウェーを代表するボクサー、チャールズ・ブラウデ(ヤーコブ・オフテブロ)。非ユダヤ人女性のラグンヒルと結婚することが叶い、幸せな日々を送っていた。しかし、彼の暮らしは、1940年に、ナチス・ドイツがノルウェーに侵攻、占領したことで一変する。姉のへレーンは安全のためにいち早くスウェーデンへと避難したが、ブラウデ家の残りの面々はノルウェーに残ることにした。だがチャールズのボクシングジムが閉鎖を命じられるなど、ユダヤ人に対する取り締まりも日に日に強化されていく。
ブラウデ家は、ポーランドの隣国であるリトアニアから亡命してきたということもあり、再び迫害を受けるのではないかという恐れを抱くようになる。ユダヤ人の身分証明書には、ユダヤ人(JEWS)の印として「J」のスタンプが押されることになった。
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