JR初の新型特急「783系」は型破りな異端児だった 「ハイパーサルーン」の愛称でJR九州の主力担う

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かつては九州各地を走るさまざまな特急として、ビジネス・観光両面で多くの乗客に親しまれた783系も最近は活躍の場を減らしている。2021年春には特急「にちりん」「にちりんシーガイア」「ひゅうが」「きりしま」といった宮崎方面での運用がなくなった。

「ハウステンボス」編成は鮮やかなオレンジ色のデザイン(記者撮影)

2022年秋ごろに開業を予定する西九州新幹線(武雄温泉―長崎間)の列車名は、かつて783系もその名を冠していたことがある「かもめ」。開業後、博多―武雄温泉間を走る特急「リレーかもめ」が新幹線と接続するようになる。武雄温泉駅のある佐世保線は、高速化のために振子式車両の投入が予定されており、783系の去就が気になるところだ。

JR九州のチャレンジの原点

JR九州初の新型特急車両である783系をめぐっては社内にも強い思い入れを抱く人が多い。同社の青柳俊彦社長もその1人。「どんな車両を造るか一生懸命議論をした」と開発当時を懐かしむ。

車両中央にある乗降口を境に客室がA室とB室に分かれる。先頭車両は窓の大きさが左右で異なる(記者撮影)

車両の中央で2つに分かれた客室については「特急車両だけれども、ほかのエリアに比べて編成が短いので、3両でも6両の雰囲気が出せるように、というのが開発のコンセプトだった」と明かす。デビュー当初にあった3両編成の場合、各車両を扉部分で仕切って6部屋にすることで、短い編成ながらグリーン車、指定席、自由席といった設定に柔軟性を持たせられるようにしたという。

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そのうえで「先頭・最後部の車両にパノラマの窓を付けたり、(眺望をよくするために)客室の床を上げたりと、やれることはなんでもやろうという思いだった。いまから見るといろいろやりすぎてまとまりがない感じもするが、783系があったからこそ、その後のJR九州の車両がチャレンジできるきっかけになったのではないか」と語る。

きょうも九州各地を個性豊かで色とりどりの特急や観光列車が巡る。西九州新幹線の開業で在来線列車の勢力図が大きく変わろうとしている今こそ、その先駆けとなった783系の歴史的価値をもう一度振り返っておきたい。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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