経営コンサルでワーママの私がガンにかかったら 人生における「突然の電源オフ」を乗り越える術

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感染症予防のため、オフィスなど多数の人がいる場所には出入り禁止。電話やメールでのみ、会社とコミュニケーションをとるように指示があった。無菌室が完備されている白血病病棟には、13歳以下は入れない。ただし、白血球の数が高い時期は、私が共有スペースに出て、子どもと面会することは可能とのこと。想像以上に自由のきかない入院生活が、スタートした。

To Doリストを捨てると、気持ちは軽くなる

想定外の、ビッグチェンジ。突如起こった「人生における電源オフ」を乗り切るために、いくつか心がけたことがある。

まず行ったのは、発想の転換だった。「自分がリーダーをしているプロジェクトはどうする?」「子どもたちの世話は?」「中学受験に向けて勉強している長女は、誰が見る?」。そんなことが頭をよぎったが、今までどおりの日常生活を続けることは、明らかに不可能であった。

「人生における電源オフ」が生じた際は、リスクマネジメントでいう、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)は即座に捨てるべきだ。1〜2カ月の入院だったら、なんとかしのいで計画どおりに事を進めようとしていたかもしれない。ただ、私の場合、入院期間は、最低半年。同じ病気の患者のなかには、1年以上入院している人もいることがわかった。

そんな極端な状況だったので、BCPではなく、コンティンジェンシープラン(Contingency Plan:緊急時対応計画)を検討するべく頭を切り替えることができた。

生活を継続するためのTo Doリストを捨てると、気持ちは軽くなる。

そして、助けてくれる人が現れてくる。窮地に陥ったときは、周りのみんなの胸を借りて、はじめから大いに頼ってしまうのがいちばんだ。若いころ、タスクが山積みだとストレスを感じたが、周りのヘルプを借りながら対応し始めると、気分も軽くなり、仕事が回り出したことを思い出した。人生の大ピンチ、もう若手ではないが周りの助けを借りようと心に決めた。

次に重要なのは、くさくさ・いじいじしないことだ。

「なんで私だけ病気になるの? 私が何か悪いことしたの?」など、考えるだけ無駄である。

主治医に、白血病発症の原因を聞いてみたが、「白血病は、原因不明なんです。交通事故にあったと思ってください」と返された。

深く考えすぎて自分を責めても、何も生まれない。病気になったら治療に集中して、淡々とやれることをやるのみ。気難しいクライアントの担当になったときに、自分の言動で相手の気分を害したのではないかと気にしたことがあった。が、くよくよしてもなんの解決にもつながらなかった。

クライアントからのコメントを精査し成果物の修正にフォーカスしたら、悩む気分が薄らいだ。治療に集中しようと気持ちを切り替えたのは、この感覚を覚えていたからかもしれない。

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