経営コンサルでワーママの私がガンにかかったら 人生における「突然の電源オフ」を乗り越える術

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3つ目は、シンプルな生活ルールの順守。

入院生活で心がけたことは、「ちゃんと食べ、筋力低下を防ぐための努力をして、ストレスをためないこと」。私は複雑な医療の情報を求めるより、この単純な原則にしたがった。抗がん剤治療中も、自分が食べられるものをどん欲にリサーチし、可能な限り3食食べるようにした。筋力維持のために、病棟のエアロバイクを利用した。

そして、不必要に不安やストレスを感じることがないように、情報コントロールも行った。正確な情報の収集ならびに取捨選択は、コンサルプロジェクトを遂行するために必要不可欠なことだ。信頼できる情報ソースから必要な情報を選び出して、その情報をベースにクライアントが求めているソリューションを組み立てていく。

自分が治療に専念できるように、読んでいてつらくなるような治療が書かれているブログは読まないようにし、専門的すぎる細かな医療情報を求めないように心がけた。

3つの単純なこと「やるべきことはわかっている」

振り返ると、「人生における電源オフ」を乗り越えるのに大切だったのは、

① 発想を転換する
② 自分を責めない
③ シンプルな生活ルールを順守する

と、実に単純なことばかりだった。

これらの心がけが功を奏して、9カ月の入院生活を無事に終え、2019年春に無事退院することができた。その後、順調に健康な生活を取り戻せている。さあ体調も戻ってきたので、どんどん活動範囲を増やそう! と、楽しみにしていたところで、コロナウイルスが蔓延。肺炎は白血病患者にとって、命取りになる最大の敵である。大変な事態になってしまった。

でも、やるべきことはわかっている。またいつか行けるはず、と中学受験を終えた長女と行く予定だったパリ旅行をキャンセルし、卒業・入学関連のイベントも白紙にした。入院生活に比べたら、家で子どもたちと過ごすのは断然楽しく快適だと、ステイホーム生活を受け入れることにした。

ホームベーカリーを購入してパンやピザをつくったり、ベランダガーデニングに手を入れハーブ栽培を始めたり。新しいことに挑戦する生活は、楽しかった。

子どもとの散歩やバドミントンを日課とした、リズムある生活をコツコツと続けた。その結果、3カ月に及ぶステイホーム生活後に受けた血液検査で、100点の結果が出たのだった。コロナ禍での経験からも、入院生活で学んだ3つの術は機能することがわかった。

これからの人生、まだまだ何が起こるかわからない。また日常を一変させるような出来事が起きたら、3つの術をベースに淡々と生活していこうと思う。

山添 真喜子 コンサルタント

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やまぞえ まきこ / Makiko Yamazoe

1974年東京都生まれ。大学卒業後、ITコンサルティングファーム、監査法人、環境コンサルファームと外資系企業を渡り歩き、米コロンビア大学で行政学(環境政策)修士課程を修了。帰国後、国内系の総合シンクタンクに入社し、サステナビリティ経営を専門とするコンサルタントとして活躍。2人の娘を育てながらプロジェクトマネージャーとして多忙な日々を送っていた際、急性リンパ性白血病を発症。2018年7月末から9カ月にわたる抗がん剤治療を乗り越え退院。2020年8月に在宅にて維持療法を終了し、2021年秋に復職。「がんノート」の動画インタビューやインスタグラム等で情報を発信している。

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