「投資をケチりすぎる経営者」が日本を滅ぼすワケ 数字で見る「投資の弱小国」日本の悲しい惨状

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私は東洋経済オンラインで生産的政府支出の記事を書き、成長戦略会議でも何回となく提言してきました。その影響かどうかはわかりませんが、今回、生産的政府支出という言葉が(おそらく初めて)国の政策に登場しました。

財政出動の議論には「投資の回収」の視点が不可欠だ

社会保障の負担が増える中、国が生産的政府支出を増やす財源としては、MMTもあり得ます。

私は経産省の「経済産業政策の新機軸」に書かれているとおり、MMTが使えるからといって、「単なる量的な景気刺激策だけでは」さまざまな構造問題を抱えている日本経済がそう簡単に回復するとは思いません。

要は、需給ギャップが50兆円だからといって、機械的に50兆円の政府支出をしても、問題がすべて解決するわけではないのです。

1990年代、国は幾度となく景気刺激策を繰り返しましたが、経済は成長しませんでした。だからこそ、政府の対GDP比の債務残高が世界一になってしまったのです。そのことを思い出すべきです。

1990年代からの経緯を研究すると、反論の余地はないでしょう。実は海外の学者の中では、日本のケースを根拠として、MMTを使っても、単なる量的な景気刺激策だけでは効果が出ないと主張されることが多いのです。皮肉なことに、MMTを否定するための材料となっています。

私は、単なる量的な景気刺激策としてMMTを使うことには反対です。

とはいえ、MMTの有効的な使い方もあると思っています。MMTを使うのであれば、PGS(生産的政府支出)の原資としてのみ使うべきでしょう。

その場合には、MMTを原資とする生産的政府支出を具体的に何の投資に使い、その投資にいくらの経済効果を期待するのか、さらには何年間で税収をどれだけ増加させ、投資を回収するのかを明確にする必要があります。

財政の健全化は、政府支出の削減や抑制、税率の引き上げだけで実現できるものではありません。このことは間違いないと断言できます。

日本は今まであまりにも、賃上げや生産性の引き上げを軽視しすぎてきました。だからこそ、今、貧困問題が起き、国が財政難に陥ってしまっているのです。継続的な賃金の引き上げ、投資促進による生産性向上があってこそ、財政健全化の道が開かれるのです。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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