牛角創業者、鳥貴族も!「チキンレース」勃発の事情 コロナ禍で外食大手がフライドチキンに熱視線

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さらに、コロナを機に注目を集めているのが「韓国チキン」だ。

最近では韓国の芸能事務所JYP Entertainmentが手がける「NiziU」が若者を中心に流行り、巣ごもりが長期化する中で動画配信サービスのネットフリックスでも韓流ドラマが大ヒット。2020年のユーキャンの流行語大賞では「第4次韓流ブーム」という言葉がノミネートされたほどだ。

こうしたブームは食にも反映される。韓流ドラマ「愛の不時着」では、韓国発で、日本を含む世界25カ国に店舗を展開する「bb.qオリーブチキンカフェ」の商品が登場するシーンがある。その影響で、サクサクとした触感のフライドチキン「オリーブチキン」や、甘辛い味付けの「ヤンニョムチキン」が、日本でも若者を中心に親しまれるようになった。

実は、日本でbb.qを運営しているのは居酒屋大手のワタミ。同社の担当者も「韓流ブームは思わぬ追い風となった」と語る。

韓国発のbb.qオリーブチキンカフェ。日本ではワタミが運営する(記者撮影)

これまで外食事業では居酒屋を中心に戦ってきたワタミは、コロナ禍で深刻なダメージを負った。2021年3月期の外食事業の営業損益は96億円の大赤字(前期は2.4億円の黒字)に陥った。

コロナ影響の先行きが見通せない中、「bb.qオリーブチキンカフェ」や空揚げ専門店など居酒屋以外の業態をどれだけ早く拡大できるかが、ワタミの存亡を占うと言っても過言ではない。「bb.qオリーブチキンカフェ」は現在10店程度だが、「すでに約30の会社から(FC出店の)話が来ており、今期中には80店を出す準備に入っている」(渡邉美樹会長)という。

「チキンレース」の行方に一抹の不安

「うまみ」も多いフライドチキン市場で、プレーヤー数は増加の一途をたどる。ただ外食業界では、成功事例を模倣した業態を他社が大量出店し、過当競争を繰り広げた結果、ブームが廃れるという悪循環が幾度となく繰り返されてきた。

昨年はバブルと言われるほど出店が急増した空揚げ専門店も、「からやま」(アークランドサービスHD)、「から好し」(すかいらーくHD)、「から揚げの天才」(ワタミ)、「からしげ」(木曽路)、「からあげの鉄人」(モンテローザ)などのプレーヤーが入り乱れている状況だ。

「少し前はタピオカ店の跡地が多かったが、足元では空揚げ専門店の居抜き物件も出てくるようになった」と、飲食店向けの物件を取り扱う不動産関係者は明かす。「いきなり!ステーキ」の運営会社は今年1月に「からあげくに」を出店後、わずか数ヶ月で撤退。市場は典型的なレッドオーシャンと化している。

フライドチキンも近い将来、勝者と敗者が決まるまで熾烈な闘いを繰り広げる「チキンレース」となることは、想像にかたくない。一過性のブームではなく消費者に日常食として定着させられるかが、市場の成長のカギを握る。

中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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