八村塁が「日本選手団旗手」を務める大きな意味 複数の人種ルーツを持つ人たちはどう見る?

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「私自身はスポーツが多様化を促進する影響力があるかどうかについては懐疑的だ。とはいえ、レイシスト(人種差別主義者)はいつまでたってもレイシストだし、スポーツが多くの人に対していい影響を与えることは間違いない。総合的に見れば、八村が旗を掲げることは、いい影響をもたらすことのほうが多いのではないか」(ヴォンクジョヴィ)

私も彼の意見に同意する。

ベルリンで4つの金を手にした黒人選手

アメリカでも同様に、スポーツは人々の橋渡しに役立ったり、アフリカ系の人々に世界の舞台で活躍する機会を与えてきた。そうすることで、アメリカは他人種が調和して平等に暮らすことに成功したように見せた。実際は真逆にもかかわらず、だが。

この最初に思い浮かぶ例はジェシー・オーウェンスだ。オーウェンスは1936年ベルリンオリンピックで4つの金メダルを獲得したアフリカ系アメリカ人選手だ。彼はその年のアメリカの旗手ではなかった(アメリカが人種隔離政策を取っていなければ彼は旗手だったかもしれない)が、アメリカがナチスに初勝利をもたらしたのは彼の活躍によるところが大きい。オーウェンスが手にした4つの金メダルはアーリア人の優位性を示すためにオリンピックを利用しようとしたアドルフ・ヒトラーの意図に打撃を与えた。

だが、ヒトラーも、当時のアメリカ大統領フランクリン・D・ルーズベルトもオーウェンスを祝福することを拒否し、世界最高の選手をホワイトハウスに招待することはなかった(白人選手はすべて招待したにもかかわらず)。

オーウェンスの勝利は、1936年のアメリカの人種隔離の現実には何の変化も与えなかったテニスの大坂なおみ選手が全米オープンで優勝した際、当時の安倍首相は彼女を祝福したが、彼女が大会中ずっと勇気を持ってひたすら主張していたこと、つまり「ブラック・ライブズ・マター(MLB=黒人の命も大事)」は都合よく無視した。

では、八村に与えられたこの栄誉は無意味なジェスチャーなのか。それとも日本におけるハーフや非伝統的日本人、そして外国人にとってのいい兆候なのだろうか? 何とも言い難い。

とにかく世論調査によると、28カ国の46%の人々が新型コロナの再拡大により東京オリンピックを観戦することへの興味がない。だから、開催国にいる私たち以外誰も八村の勇姿を見ることができないかもしれない。

バイエ・マクニール 作家

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Baye McNeil

ブルックリン出身の作家・コラムニスト・講演者。2004年に来日し、「The Japan Times」 などで執筆しながら、異文化の交差点で生きる経験や、人種・アイデンティティ・多様性について鋭い視点で発信している。代表作 『Hi! My Name is Loco and I am a Racist』 に続き、最新作『Words by Baye, Art by Miki』 では、日本人の妻と築いた人生をユーモアと洞察に満ちた筆致で綴る。日本社会の枠にとらわれない視点が話題を呼び、講演やワークショップも多数開催。ジャズ、映画、ラーメンをこよなく愛する。

ウェブサイト:Baye McNeil/life in Japan

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