米中「軍事衝突」最悪シナリオが無益でしかない訳

あらかじめ危険性を認識して行動することが重要

米中もし戦わば(写真:MicroStockHub/iStock)
貿易戦争を軸に経済、軍事面で対立が深まるアメリカと中国。共和党・トランプ政権から始まったアメリカの対中強硬姿勢は、民主党のバイデン政権でも受け継がれるなど、超党派の支持を得ている。一方、7月1日に共産党の創立100周年を迎えた中国は、次の100年と位置づける「2049年の建国100周年」に向けて、強国化を進める考えだ。
『週刊東洋経済』7月19日発売号は「2050年の中国 世界の覇者か落日の老大国か」を特集。GDPでアメリカを追い越す一方、高齢者5億人に迫る少子高齢化の実情など、30年後の中国の未来像を展望した。
またエマニュエル・トッド、ジャック・アタリ、大前研一、ジョセフ・ナイなど世界の10賢者へのインタビュー、「ポスト習近平」の後継人事、インドを巻き込んだ地政学、台湾侵攻の具体的シナリオ、アメリカ・ウォール街が狙う中国年金マネー、デジタル人民元の行方、日中関係への提言など、最新データとともに中国の実像と今後に迫った。
最悪のケースとして、米中間の軍事衝突はありうるのか。国家安全保障が専門の米ハーバード大学グレアム・アリソン教授に米中の行方を聞いた。

米中関係は非常に複雑

──貿易戦争など対立が激しくなる米中関係の今をどう見ていますか。

複雑だ。そして非常に複雑だ。

グレアム・アリソン(Graham Allison)/1940年生まれ。米ハーバード大学ケネディスクール教授。レーガン政権からオバマ政権まで歴代アメリカ国防長官の顧問を、クリントン政権では国防次官補を務めた。キューバ危機を分析した『決定の本質』で有名(撮影:田所千代美)

中国は過去20年間の急激な経済成長により、アメリカにとって経済面でのライバルとなった。アメリカが長年保ってきた世界一の産業国、世界一の貿易国、そして世界の経済成長における主要な原動力としての座を、中国によって追われることになった。購買力平価ベースのGDPで見れば、中国はアメリカに代わって世界最大の経済圏となったのが分かる。

アメリカがリーダーとして構築し、保護してきた世界秩序に対し、中国の発展がもたらす影響はとても大きいものだ。世界情勢がこのように変化していく中で、アメリカはその影響力だけでなく、まさしくナンバーワンの国としての「アイデンティティ」が失われるようになる。

一方、今の米中は切っても切れない経済関係にある。現実的に考えれば、両者のデカップリングは不可能だ。もしデカップリングが起きれば、自国が経済的に貧しくなるだけでなく、(政治的にも)政権の維持が難しくなるだろう。

次ページ幸いなことに米中はチキンレースを望んでいない
ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 賃金・生涯給料ランキング
  • ボクらは「貧困強制社会」を生きている
  • 就職四季報プラスワン
  • 夢を諦めない「脱会社員の選択」
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ウーバーイーツ配達員の過酷
ウーバーイーツ配達員の過酷
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
採用担当者が嘆く「印象の悪い就活生」の共通点
採用担当者が嘆く「印象の悪い就活生」の共通点
ヤマト独走に待った!佐川・日本郵便連合の勝算
ヤマト独走に待った!佐川・日本郵便連合の勝算
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
統合から20年どこでつまずい<br>たのか みずほ 解けない呪縛

みずほ銀行が相次ぐシステム障害で窮地に陥っています。その根底には、3行統合から今に至るまで解決できていない呪縛と宿痾が。本特集ではみずほが抱える問題点をガバナンス面や営業面などから総ざらい。みずほは立ち直ることができるのでしょうか。

東洋経済education×ICT