米中「軍事衝突」最悪シナリオが無益でしかない訳

あらかじめ危険性を認識して行動することが重要

もしアメリカが自国中心の金融システムから中国を追放しようとし、それに応じて中国もアメリカへモノの輸出を止めようとするなら、ウォルマートやホーム・デポといったアメリカの小売店の棚はあっという間に空っぽになり、両国の経済と社会に混乱が生じるだろう。

そうなれば、あとは両国による我慢比べだ。幸いなことに、少なくとも現時点では、米中はこうしたチキンレースを望んでいない。

今の米中は競争と協力が合わさった複雑な関係だ。そして、米中の経済関係が今後、さらに張り詰めたものに、そしてより複雑なものとなるのは間違いないだろう。

「トゥキディデスの罠」に警鐘

――古代ギリシャの歴史家トゥキディデスが説いたアテネとスパルタのペロポネソス戦争を例に、歴史上、新興国の成長とともに既存の覇権国との力に力関係が崩れた場合に戦争が起こりやすくなる「トゥキディデスの罠」に警鐘を鳴らしています。

トゥキディデスが説いているように、古代ギリシャのアテネ、100年前のドイツ、そして現在の中国のような新興国が、スパルタ、大英帝国、そしてアメリカのような覇権国に取って代わるような脅威となると、結果としていちばん頻繁に起こるのは戦争だ。『米中戦争前夜――新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ』(ダイヤモンド社)で述べたように、この500年間で新興国が覇権国に挑んだ例は16回あった。そのうち12回で戦争が起きた。

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トゥキディデスが指摘するライバル関係では、誤解が大きくなり、誤算が何倍にもなり、事態悪化の危険性が増幅する。通常なら大した結果にならなかったり、制御可能だったりするちょっとしたきっかけでも、報復の悪循環を引き起こす。その結果、どちらも望んでいない破滅的な戦争へと両国を引きずり込むことがある。

――米中間にとって衝突の引き金は何でしょうか?

最も高い可能性は台湾だ。もし台湾が独立しようと決意し、挑発と考えた中国が武力によって台湾を併合しようとするなら、アメリカはどのように対応するだろう? また日本はどのように対応するだろう? 

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