銀河と瑞風、JR西「二枚看板」で挑む地域共生戦略 人気車両活用、自治体と連携しエリア活性化へ

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試行錯誤を繰り返した結果、できるだけ短時間で料理を提供するために、1人のクルーが料理を受け取って部屋まで運んで配膳するのではなく、料理をキッチンから運搬するクルーと、料理を受け取って接客するクルーに分けるリレー方式を採用した。

フランス料理のディナーなら前菜からメイン、デザートまで6種類の料理が提供される。それを1品ずつ届けるのだから、客室乗務員の負担は以前とは比べものにならないほど重くなった。ただ、部屋の担当クルーが料理を運ぶことで、「お客様とお話しできる機会が増える」(客室乗務員の竹村水穂さん)。乗客とより深いコミュニケーションが取れるようになれば、それが顧客満足度の向上につながる。

カジュアルな「銀河」はラーメン

一方で、「もっとカジュアルに楽しめるような列車も走らせるべきだ」。こんな発想からスタートしたのが銀河である。したがって銀河は寝台列車ではなく、ごろ寝ができる指定席列車といった位置づけだ。客室乗務員を手厚く配置した瑞風とは異なり、銀河のクルーは最小限。食堂車もなければ車内販売もない。乗車前に乗客が思い思いに弁当や飲み物を買って車内に持ち込む。

その代わり、銀河ではフリースペースに沿線のボランティアが乗り込んで、名産品などの販売を行うこともある。川西氏が狙った「学芸会」の取り組みに期待しているのだ。その意味では地元の協力なしには、銀河の旅は成り立たない。

和歌山駅停車中に「夜食」として楽しめるラーメン店(記者撮影)
銀河の窓越しに横になれる「ノビノビ座席」が見える(記者撮影)

瑞風の魅力の一つは途中駅での立ち寄り観光だが、銀河でも立ち寄り観光はゼロではない。今回のコースでは、深夜に和歌山駅に到着すると、駅から徒歩4分の場所にあるラーメン屋で、夜食としてラーメンのおもてなしがある。「和歌山といえばラーメン。地元の人に愛される名店で、駅から近いこともあり、この店に決めた」(JR西日本)。地元のラーメン屋で食事をすることも立派な観光である。

串本駅到着後に見学する国の天然記念物「橋杭岩」では地元ボランティアガイドが説明する(記者撮影)

また、6時04分に串本駅に到着すると、バスで5分ほど移動し、橋杭岩という熊野地方を代表する絶景を見学する。約900mにわたり一直線に大小の奇岩が並び立つ、国の天然記念物だ。早朝にもかかわらず、地元のボランティアガイドが説明してくれる。その後はレストランで地元の海産物を使った朝食「漁師の朝ご飯」が提供される。

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