銀河と瑞風、JR西「二枚看板」で挑む地域共生戦略 人気車両活用、自治体と連携しエリア活性化へ

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終点の新宮駅では、駅のコンコースで地酒が振る舞われ、比丘尼姿の語り部が熊野曼荼羅絵解きの実演を行う。新宮市商工観光課の玉井祐貴さんは「コロナ禍で観光需要が減ってしまった。銀河に乗って訪れた人が宿泊してくれれば経済効果も得られる」と期待を寄せる。

終点新宮駅ホームでの出迎え。コンコースで地酒も振る舞われる(記者撮影)
「銀河」の盛り上げに協力する和歌山大学の学生たち(記者撮影)

地元の大学生も一役買っている。和歌山大学の有志16人で構成された「きのくに線活性化プロジェクト」。銀河の車窓から海岸が見える場所や時間を紹介するリーフレットの配布や、沿線の見どころを紹介する車内放送などを行う。試乗会当日は、銀河には乗車せず、4人のメンバーが自動車で列車を先回りして、停車駅で歓迎してくれた。メンバーの1人、岸本瑞生さんは「きのくに線(和歌山線)を通じて、和歌山県を盛り上げたい」と意気込む。

銀河の運行はJR西日本だけでは成り立たない。地元との連携の賜物だ。この点は瑞風も同様で、立ち寄り観光地の選定に関しては、JR西日本は、「ほかでは見られない特別感」を地元に求め、地元は瑞風による全国的な知名度向上を期待する。共存共栄、あるいはウィンウィンの関係と言ってもよいだろう。

鉄路維持に地元の協力は不可欠

銀河は山陽、山陰、紀南の3エリアに乗り入れるが、117系が走っていたエリアはほかにもある。たとえば、湖西線、草津線、福知山線だ。「さまざまなエリアから銀河を走らせてほしいという要望がある」(JR西日本の内山課長)。ひょっとしたら将来、新たな地域で銀河の勇姿を見ることができるかもしれない。

明るい話ばかりではない。JR西日本のエリアには、利用者が著しく減少して、鉄路の維持に疑問符が付くような路線も見られる。長谷川一明社長は、「これまで内部補助によって成り立ってきたローカル線の維持が難しくなってきたので、今後のあり方について課題提起をスピードアップし、関係の皆様といっしょになって、持続可能な地域交通を実現していきたい」と話す。

今では近畿圏の黒字で閑散路線の赤字を埋めてきたが、コロナ禍で近畿圏の旅客収入も減少し、JR西日本が自力で閑散路線を支えるのが困難になってきた。要は、鉄路維持には地元の協力が不可欠ということだ。

JR西日本と地元がウィンウィンの関係に持ち込めれば、その沿線が赤字でも安泰だろう。しかし、地元が路線維持に向けた協力を惜しんでいては、おそらく存続はままならない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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