銀河と瑞風、JR西「二枚看板」で挑む地域共生戦略 人気車両活用、自治体と連携しエリア活性化へ

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そのとき出会ったのが「紀の国トレイナート号」。銀河と同じ117系を活用して和歌山県の紀伊田辺―御坊間を走る臨時列車である。車内にアート作品を掲示し、音楽隊によるライブ演奏があり、ジビエのハンバーガーなどの販売も行われる。

「銀河」車両デザインを手掛けた川西康之氏(記者撮影)
4号車のフリースペースは「紀の国トレイナート号」の経験がルーツ(記者撮影)

「走る車内の学芸会のような電車で、大変楽しく、あっという間の乗車時間。当時の支社長が自ら地域巻き込み型の取り組みをしており、これが鉄道の未来だと感じた」

川西氏が紀の国トレイナート号で受けた感動が、銀河のデザインとして反映された。1両まるごとフリースペースである4号車には、カウンターや大型ベンチが設置されている。紀の国トレイナート号のような取り組みを銀河でもしてもらいたいという思いが込められているのだ。つまり、銀河のルーツの一端は和歌山にあったわけだ。

JR西日本は銀河より一足早い2017年6月に豪華寝台列車「TWILIGHT EXPRESS(トワイライトエクスプレス)瑞風」を投入して、関西と山陽、山陰方面をつなぐ列車旅を提供している。そこへ、銀河が加わり、JR西日本にとって、夜行旅が可能な長距離列車の二枚看板がそろったことになる。

コロナ禍で変わった車内の「食事」

同じ長距離列車でも瑞風と銀河は性質はまったく異なる。瑞風は「走る豪華ホテル」。車両が豪華なだけでなく、提供される料理、そして何よりも、客室乗務員のおもてなし。つねに乗客に気を配り、さまざまな要求に応えてくれる。

コロナ禍において瑞風の食事スタイルも大きく変わった。瑞風の客室は16部屋あり、乗客数は最大34人。これまでは乗客を2グループに分け、食堂車で料理が提供されていた。しかし、コロナ禍では食堂車に大人数が集まっての食事は難しい。

コロナ禍で車内の食事スタイルが変わり、現在「瑞風」の食堂車はルームサービスの拠点として使われる(記者撮影)
瑞風の客室乗務員たち。最高のおもてなしを目指す(記者撮影)

食堂車の人数を減らすなどの対策も検討されたが、JR西日本は次善の策は取らず、「むしろチャンスと捉えて、新しいことをやってみようと考えた」(瑞風推進事業部の平田壮輔列車長)。

高級ホテルでは朝食やディナーのルームサービスは当たり前。各部屋に料理を運んで部屋で食べてもらう。これを瑞風でやってみたらどうか。これこそ、走る豪華ホテルという車両の魅力を最大限に生かすアイデアだった。

とはいえオペレーションは大変だ。料理を各部屋に運ぶとなると、キッチンのある車両から最も遠い部屋までは80m離れている。揺れる車内で料理を運ぶのは大変だし、何より、運んでいる間に料理の温度が変わる。

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