「オンライン留学」がリアル留学の再開後も残る訳 実践して見えてきた「代替」だけではない価値

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プログラムを担当した岩倉駿介氏は「開始当初は、学生が受け身の姿勢で参加している部分もあったのですが、回を重ねるごとに、積極的に気になることを質問するようになり、わかりにくいところがあれば聞き返すようになりました」といいます。参加学生からは、「現地の問題をリアルに感じ取ることができた」という声がありました。

オンライン留学はリアル留学と共存していく?

以上のようにオンライン留学のプログラムは充実してきましたが、学生はどれくらいの関心を持っているのか、また重視しているポイントや懸念点はどこにあるのか、「文部科学省トビタテ!留学JAPAN」がインターネットで実施した意識調査の結果から読み解きます(調査期間:2021年3月17日~3月29日)。

オンライン留学や海外プログラムへの興味に関しては、高校生の62.2%、大学生の69.9%が「オンライン語学留学に興味がある」と回答しています。また5割以上の学生が、インターンシップやボランティア、海外大学の学位取得などさまざまなオンライン留学に興味があることがわかりました。

文部科学省「トビタテ!留学JAPAN」海外留学に関する意識調査より

オンライン留学への期待やメリットに関しては、「費用が抑えられる」が1位となり、渡航留学に興味はあるけど、予算がないから断念していた層に対しての選択肢としての効果が今後期待できそうです。

一方、懸念点・デメリットは、「海外の異文化・価値観を体験する機会が少ない」と回答した学生が半数以上となり、実際に海外に渡航して異文化を体験することに価値を見いだしている学生が多いことがわかりました。この調査結果からうかがえるのは、多くの学生がオンライン留学の「使い方」をしっかり理解しているということです。

トビタテ!留学JAPAN広報担当の西川朋子氏は言います。

「オンライン留学は、概して費用が安く、移動不要の気軽さもあり、オフライン留学の『代替』のみならず、『お試し』『準備』『新しい学びかた』として活用が進みそうです。それによって、逆に現地で文化や人々と触れ合うことへの関心が喚起され、将来的には留学数増加につながることを期待したいです」

西川氏と私も同じ意見です。リアル留学とオンライン留学にはそれぞれ違った役割があり、今後ワクチン接種が進み、海外派遣留学が再開となった後もお互いに進化しながら共存していくと考えます。

まさに「旬」の時期を迎えているオンライン留学。ある意味リアル留学では経験できない、デジタルの学びの機会を提供していると言えそうです。

大川 彰一 留学ソムリエ 代表取締役

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おおかわ しょういち / Shoichi Okawa

日本認定留学カウンセラー協会幹事、TAFE Queensland駐日代表。1970年京都市生まれ。セールス&マーケティングに約10年間携わり、カナダに渡航。帰国後、留学カウンセラーとして4年間で約1000名以上の留学やワーキングホリデーに関わる。その後、米国の教育系NPOのアジア統括ディレクターとして約6年間、グローバル人材育成に尽力。海外インターンシップを大学の単位認定科目としての導入に成功、東北復興プロジェクト、アジアの国際協力プログラム開発にも携わる。現在は「留学ソムリエ®︎」として国際教育事業コンサルティングや留学の情報を発信。留学ソムリエの詳細はHPFacebookから。著書に『オトナ留学のススメ』(辰巳出版)。

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