アウディが2026年までに「新車をEV化する」真意 「技術による先進」として電動化を決断した

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2020年、電動自動車によるレースシリーズ「FIAフォーミュラE選手権」を戦ったマシン(写真:Audi Japan)

モータースポーツ活動においても、クワトロで世界ラリー選手権(WRC)を席巻したあと、フランスのル・マン24時間レースにおいてガソリン直噴ターボエンジンで優勝し、そのあとディーゼルターボエンジンでも勝利をおさめ、連勝を重ねた。戦前のグランプリレース時代には、V型12気筒エンジンをミッドシップに搭載した「アウトウニオン」(フェルディナント・ポルシェ博士が設計)が、メルセデス・ベンツと雌雄を決したこともある。

そうした「技術による先進」を、21世紀に向け示したのが、2011年秋のフランクフルトモーターショーに出展した「A2コンセプト」だ。日本でいう5ナンバーの車体寸法の小型ハッチバック車はEVで、自動運転技術や情報通信技術を搭載していた。のちにダイムラー社によって象徴的な言葉「CASE」(コネクティビティ/オートノマス=自動運転/シェアード/エレクトリック)が示されたが、それに先んじて21世紀を体現したコンセプトカーだった。

ところが、2015年に起きたフォルクスワーゲンのディーゼル排ガス偽装問題がアウディへも及び、当時のルパート・シュタートラー会長が逮捕されるなどして停滞が生じた。それでも10年に及ぶ準備がようやく今、整ったということだろう。1999年に創業100周年を迎えたとき、シュタートラー会長は「次の100年へ向けた準備はできている」と私に語っていた。

電動技術e-tronの名を冠したEVの登場

今秋に日本でデリバリーが開始されるe-tron GT(写真:Audi Japan)

A2コンセプトのころから、アウディの電動技術にはe-tronの名称が与えられていた。その名を冠したEVが昨年市販された。アウディの総力を結集したと思われる走行性能はもちろん、モーターを前後に2つ持つ4輪駆動であり、まさに電動クワトロである。ドアミラーをカメラで代替するバーチャルエクステリアミラーの取り扱い方や完成度など機能も高く仕上げられていた。

e-tronには、ポルシェ「タイカン」と同様のGTという車種があり、4輪駆動車同士の比較ではe-tron GTのほうが若干安く、販売店へ比較のため来場者があり、注文を得ているという。アウディ広報によれば「かつて、ポルシェと比較されることはなく、初めてのこと」と驚きを隠さないが、それでも同じ性能であればアウディも選択肢のひとつになると消費者がみた点もEV販売の新鮮さといえそうだ。

e-tronと比較されることも多いポルシェ「タイカン」(写真:Porsche)
次ページ消費者が望むEVとアウディの歩む道とは?
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