「監視資本主義者」は人類の未来から何を得るのか 「人という天然資源」へと追いやられる私たち

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ズボフ教授が見抜いた監視資本主義の本質をお伝えします(写真:Elnur/PIXTA)
監視資本主義という言葉の生みの親として知られるショシャナ・ズボフ教授による『監視資本主義: 人類の未来を賭けた闘い』の邦訳がこのほど上梓された。700ページに迫る大著でありながら、オバマ元大統領が選ぶ2019年のベストブックに選出され、世界的な話題書となった本書から、ズボフ教授が見抜いた監視資本主義の本質を、抜粋・編集してお届けする。

ラリー・ペイジによる深遠な答え

グーグルの元CEOエリック・シュミットは、同社のチーフエコノミスト、ハル・ヴァリアンが早々と広告オークションを検討したときに、グーグルの進むべき道が明らかになったと考えている。「突然、自分たちがオークションビジネスの只中にいることに気づいた」と彼は言う。

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一方、ラリー・ペイジは、「グーグルとは何か」との問いに対して、それとまったく異なる、はるかに深遠な答えを見いだしたとされる。ダグラス・エドワーズは、2001年にグーグルの創業者であるペイジとセルゲイ・ブリンとともに、この問いについて真剣に検討したことを回顧する。

ペイジは熟考を重ねた末に、こう述べた。「グーグルが所有するものをカテゴライズするとしたら、それは個人情報だろう……つまり、きみが見てきた場所やコミュニケーションをグーグルは所有する。……センサーは実に安く……情報の蓄積にも金はかからない。カメラも安い。人々はおびただしい量のデータを生み出す……きみがこれまで見たり聞いたり体験したりした、あらゆることを検索できるようになる。きみの人生を丸ごと検索できるようになるはずだ」。

次ページ繰り返される「資本の本源的蓄積」
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