「タフト」発売1年、「ハスラー」との勝負の行方 ライバル同士で市場拡大するWin-Winの関係へ

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ただし、面白いこともある。実はハスラーの売れ行きは、ライバルであるタフトが登場したあとのほうがいいのだ。2代目ハスラーの発売は、タフトよりも半年ほど早い2020年1月から。しかし、2020年の1~5月の販売は、年の後半ほどよくないのである。

販売台数ランキングは1月:8位、2月:9位、3月:6位、4月:7位、5月:6位であった。ところが、ライバルとなるタフトが登場する6月は、順位を4位にあげている。タフトというライバルが登場したことで、ハスラー自体の成績も伸びたのだ。

タフトは2021年5月に一部改良を実施。同時に写真の特別仕様車 Gターボ“クロム ベンチャー”を発売(写真:ダイハツ工業)

勝ち負けでいえばハスラーが上だが、タフトがいなければ、もっと苦戦していたのではないだろうか。また、メーカーが発表している販売目標はタフトが月間4000台、ハスラーは6000台で、どちらも目標をクリアする成績を挙げている。ライバルとなる2台は、Win-Winの関係を築いていたのだ。

ライバルなくして市場拡大はない

クルマの世界では、ライバルがいたほうが盛り上がりやすい。過去にも、こうした事例はいくつもあった。

たとえば、2009年にトヨタ「プリウス」が初めて年間新車販売ランキングで1位を獲得したときは、ホンダ「インサイト」がライバルとして注目されていた。2000年代前半は、7人乗りワゴンのトヨタ「ウィッシュ」とホンダ「ストリーム」が戦い、どちらも販売台数を伸ばした。

軽自動車の主力となっているスーパーハイトワゴンもそうだ。

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ダイハツ「タント」がジャンルを開拓し、スズキ「パレット」(現スペーシア)、ホンダ「N-BOX」、日産「ルークス」、三菱「eKスペース」とライバルが続々と登場したことで、市場を拡大したといえる。

1台より2台、さらにライバルの数が増えるほど、それらのクルマたちの注目は高まり、ブームとして売り上げが伸びるのだ。

そういう意味で、軽自動車のクロスオーバーは、ライバルが少ない。ホンダや日産/三菱からの参戦によって、モデル数が増えるほど販売は伸びることだろう。さらに、クロスオーバーだけでなく、本格SUVも軽自動車はほぼ手付かずの領域となる。登録車ではSUVが世界的なムーブメントになっているのだから、軽自動車にも可能性はあるはず。新たな挑戦者の登場を期待したい。

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鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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