鉄道法令、なぜ「文語体カタカナ」にこだわるのか 新設の条文なのに「口語体ひらがな」を使わない

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しかし、今回の鉄道運輸規程で追加された条文は、令和の世、21世紀になってからの追加であるにもかかわらず「文語体カタカナ」である。

第二十五条ノ二 鉄道係員ハ旅客ガ第二十三条第一項第一号乃至第三号ニ掲グル物品ヲ客車内ニ持込ムコト其ノ他危害ヲ他ニ及ボスベキ虞アル行為ヲ防止スル為特ニ必要アリト認ムルトキハ旅客又ハ公衆ノ立会ヲ以テ其ノ携帯スル物品ヲ点検スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ鉄道係員ハ旅客又ハ公衆ニ対シ当該点検ニ必要ナル協力ヲ求ムルコトヲ得
②旅客又ハ公衆ガ前項ノ点検又ハ協力ノ求ヲ拒ミタルトキハ鉄道係員ハ当該旅客又ハ公衆ニ対シ車外又ハ鉄道地外ニ退去スルコトヲ求ムルコトヲ得

本来なら、「口語体ひらがな」で、たとえば、

①鉄道係員は、旅客が第23条第1項第1号から第3号に掲げる物品を客車内に持ち込むこと、その他危害を他に及ぼすおそれのある行為を防止するために特に必要があると認めるときは、旅客または公衆の立会いのもとで携帯する物品を点検することができる。この場合には旅客または公衆に対しその点検に必要な協力を求めることができる
②旅客または公衆が前項の点検または協力の要求を拒否した場合には、鉄道係員は、その旅客または公衆に対し、車外または鉄道地外に退去することを求めることができる

としてもいいはずである。

しかし、鉄道運輸規程の他の条文は制定された時期の関係もあっていまだに「文語体カタカナ」のままで残っている。他の条文が制定当時の「文語体カタカナ」のままなのに、改正や追加された条文だけ「口語体ひらがな」となってしまうと、条文表記のつり合いが取れない。そのため個別の条文の修正や追加などがあっても法令全体が「文語体カタカナ」のものは「口語体ひらがな」にはしないという扱いになっているようである。

120年前からある鉄道営業法

ほかにもこのような扱いの条文は散見される。

たとえば鉄道営業法の第14条を見てみる。鉄道営業法自体は、今から120年以上前の1900年(明治33年)に作られた古い法律であるが、2017年に改正民法が公布されたときにあわせて第14条が改正されている。

もともとは「運賃償還ノ債権ハ一年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス」と定められていたが、改正民法に即するよう2017年に「運賃償還ノ債権ハ之ヲ行使スルコトヲ得ベキ時ヨリ一年間行使セザルトキハ時効ニ因リテ消滅ス」と改正された。

もし、まったく新しい法令で制定されたとしたら、例えば「行使セザルトキハ」の部分は「行使しないときは」という柔らかい言葉遣いで「口語体ひらがな」になったであろう。

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