鉄道法令、なぜ「文語体カタカナ」にこだわるのか 新設の条文なのに「口語体ひらがな」を使わない

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なお、鉄道営業法の中にはさらに特徴的な規定がある。第18条の2という条文は先に述べた改正民法とあわせて新設された。

この条文の表記は、

「鉄道ニ依ル旅客運送ニ係ル取引ニ関スル民法第五百四十八条の二第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ同項第二号中『表示していた』トアルハ『表示し、又は公表していた』トス」

というものである。

・平成末期に新設された条文なのに鉄道営業法全体にあわせて「文語体カタカナ」

・しかし、引用されている民法は「口語体ひらがな」なので、民法引用部分は「口語体ひらがな」

という「口語体文語体カタカナひらがな」の条文に出来上がっている。

口語体に統一は無理?

「法律の不知は許さず」という格言がある。「法律で定められているなんて知らなかった」という言い訳は許さないというものである。そうであるなら、法律や規則、省令などは、その規律を受ける国民にわかりやすくなければならない。その点では、現代に条文の追記や一部改正があっても「文語体カタカナ」が使われ続けるのでは、その目的は達せられないように思われる。

それならばいっそのこと全部「口語体ひらがな」に変えてしまえという意見もあろう。たとえば、大正時代につくられた地方鉄道法は、国鉄民営化の流れの中で1986年に制定された鉄道事業法に取って代わられたが、その際、「文語体カタカナ」から「口語体ひらがな」に変身を遂げた。

東海道新幹線の開業にあわせて1964年に制定されたいわゆる新幹線特例法は、鉄道営業法の特別法として新幹線にのみ適用されるものであるが、元となる鉄道営業法と異なって「口語体ひらがな」である。

しかし、法律の内容を変えずに言葉遣いを変えるといっても、言葉が持つ意味が変わらないかどうかの確認は必要であろうし、せっかく現代語に変えるのなら現代に即した内容も盛り込んだほうがよい、ということになろう。全体を変えるとなると今の時代に各条文が適合するかどうかも検討する必要がある。

そうすると単純に言葉遣いを変えるといっても法令全体でその点検や議論を行うのには相当な労力を要する。大改正の必要に迫られれば別であろうが、それほどの必要性がなければあえて変える必要もないということになるのであろう。

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