学校での「起業家教育」に必要なものとは? 「起業」を職業の選択肢に入れよう

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杉並第四小学校のケース(7月15日)
4年生のクラスが「杉四カンパニー」の商品審査発表会を開催した。内容は自ら開発した商品(今回はタオル)のデザインを決定する企画プレゼンテーション。子どもたちは、「地元高円寺を多くの人にPRしたい」「市場調査では明るい色が人気だった」「色数を減らすと安く商品提供できる」… 商品審査員は地元商店街の代表、同窓会会長、タオル会社社長、PTAや地域代表の方々で、審査員からの質問やアドバイスに、杉四カンパニーの社員(子どもたち)はてきぱきと答えて自分たちのデザインをアピールをしてみせた。

こちらは小学校の事例。杉並第四小学校では「総合的な学習の時間」の中の35時間を起業家教育「杉四カンパニー」にあてています。授業の運営にあたっては起業家教育プログラムを提供する民間企業「マイトイ」が全面的に支援・協力。模擬株式会社を立ち上げ、オリジナル商品を企画・開発、株式を発行して資金を集め、商品を発注、販売戦略を練って販売活動を行い、利益を分配、利益の一部は税金の考え方も学びつつ、学校への寄付など社会還元を行います。通常の会社設立と事業実施を模擬的に体験し、お金の意味、組織の役割、地域の活動を学ぶ仕組みです。「与えられたことをやるのでなく、自分たちでゼロから考えて、試行錯誤をしながら創り出す経験が大事」と、このプロジェクトを推進する佐藤広明校長は語ります。

筑波大学のケース(7月20日)
「文字ニュースを分かりやすい動画に自動変換して多くの人に伝える」、「農家で廃棄処分になる野菜に新しい流通経路を」、「買い物をした人が、ついでに他の人に商品を届けるシェアリングサービス」。ユニークなプランを活き活きと発表する学生に対し、学長や副学長からは鋭い突っ込みが入り、会場には笑い声が溢れる。学生たちは一流コピーライター、ベンチャーキャピタリストからのコメントにも真剣に耳を傾けた。

こちらは大学の事例。「Tsukuba Creative Camp」は筑波大学と大学出身経営者(筑波みらいの会)によるサマーセミナーとビジネスプランコンテストからなるイベントです。大学側は永田恭介学長がフルコミットし、経営者側はインテル前社長の吉田和正氏、LINEの森川亮社長、サイバーダインの山海CEOをはじめとする豪華メンバーが参加しました。

全学の学生を対象に参加者を募集し、敢えて技術系と文系の組合せでチームをつくり、経営者による座学、メンタリングセッションを経て、プレゼンテーションに臨みます。分野をまたいだチーム作りや、有名経営者から後輩への熱心な指導が奏功し活気のあるイベントになっています。LINEの森川社長は「子どもの頃からの夢や社会の課題の解決など純粋な想いの提案が多かった。これをきっかけに社会にとって意味がある事業を大きく育てて欲しい」と語ります。

なぜ今、起業家教育なのか

日本において開業率が低い背景には、起業が職業の選択肢となっていないこと、起業が社会に浸透していないことが大きな要因と考えられます。

第一生命が調査した「小学生のなりたい職業ランキング」(2014年調査)によると、男子は①サッカー選手、②野球選手、③食べ物屋さん、学者、消防士/救急隊員、女子は①食べ物屋さん、②保育園・幼稚園の先生、③医師となっています。ランキングの中には「起業して社長となる」という選択は入っていません。

起業活動の国際比較をするGlobal Entrepreneurship Monitorの調査をもとにした分析でも、「身近に起業した人を知っているか」という起業活動の社会への浸透度が14%(先進国平均30%)、「起業の知識・能力・経験がある」という起業の知識・経験の保有率が9%(先進国平均38%)と諸外国と比べても低い状況です。

起業しようと思わない、起業が身近でない、起業に関する知識がないといった国民一般の意識・知識面での課題が明確になっています。しかし、もともと日本人に起業家精神がないかというとそうではありません。明治維新後や戦後は起業家が大いに活動し、そこから今日の日本を牽引するリーディング企業が出てきています。現在の状況は改善可能であり、起業家教育の果たす役割は大きいと思います。

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