民放キー局が「TVer」に任せた2つの大役と不安 ネット同時配信も秒読み、ローカル局で課題も
テレビ局各社は落ち込む広告収入の挽回策として「ネット広告の拡大」を掲げる。TVerはその中心に位置づけられているのだ。
無料見逃し配信で在京5局トップの再生回数を記録したTBSホールディングスは、TVerやその他無料配信サービスを含めた売上高が前年46%増(数字非公表)となっている。別のテレビ局幹部も「TVerはコロナの影響もあって大きく成長した。(TVerにおける売上高は)2021年度は前年の2倍を目指す」と息巻く。
日テレはTVerでのライブ配信強化を明言
TVerが期待されるもう1つの理由は、放送のネット同時配信への対応だ。NHKがいち早く昨年4月に開始したが、10~20代を中心とした若年層に番組を見てもらうためにネット同時配信が必要ではないかという議論は放送業界で長年行われてきた。
TVerではスポーツを中心に地上波で放送されている一部の番組を配信する試みが広がっている。また、2020年10~12月の3カ月間、日本テレビが19時から23時のプライム帯と呼ばれる時間帯に限ってネット同時配信を試験的に実施した。
今後もこうしたネット同時配信は普及していくと見られており、日本テレビホールディングスは決算説明会において「TVerでのライブ配信強化」を明言。民放各局で放送される東京オリンピックの競技中継はTVerでもライブ配信される予定だ。TVerにおけるネット同時配信の本格始動は秒読み状態とみられる。
とはいえ、課題も少なくない。その1つがTVerにおいて地方のテレビ局の存在感が薄いことだ。ある地方局関係者は「(キー局のコンテンツが多い)TVerは競争が激しい。地方から番組を供給してもあまり視聴されることがなく、注力する意味を感じない」と吐露する。そうした事情もあってか、名古屋を拠点とする在名テレビ局4社は昨年3月、TVerに代わる見逃し配信の共通プラットフォーム「Locipo(ロキポ)」を立ち上げた。
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