買収6年「湘南モノレール」、高い買い物だったのか

2015年に「みちのりグループ」入り、全通50周年

すると、乗り物としての面白さがあることがわかりました。思ったよりも速いスピードで滑り出し、カーブをいくつも曲がり、トンネルにダーッと入っていくあのアトラクション的な感じですね。交通事業は、「乗る」こと自体が目的となるケースは珍しいのですが、このモノレールであれば、乗ること自体が目的となりうる。あとは、きちんと営業・宣伝活動を行えば、利用者は増えるだろうという感触を持ちました。

――みちのりグループは、ベストプラクティス(ある結果を得るのに最も効率のよい技法・成功事例)をグループ内で横展開し、共有する施策を行っており、これが発展の大きな原動力になっていると伺いました。しかし、グループのメイン事業であるバス事業とモノレール事業との間では、共有は難しいのではないでしょうか。

湘南モノレール全通時、片瀬山トンネルから湘南江の島駅へ進入する300形車両(写真:湘南モノレール)

たしかに車両整備等に関しては、バスと鉄道ではずいぶん違うので共有が難しいのはそのとおりですが、宣伝、PR活動といった面では、これまでの活動実績の横展開ができています。従来、交通事業者は宣伝やPRといったことにあまり考えを割いてこなかった。しかし、プッシュ型の営業も必要であるというのがわれわれの発想であり、バス等の事業において実際に効果を上げています。

例を挙げると、路線バス沿線の高校の新学期スタートに際して高校の構内に定期券の販売所を設けさせていただいたり、高校の入学案内の書類の中にバス定期券の申込書を入れてもらうよう、多くの学校に要望したりしました。すると、その地域では高校生の数が8年間に9%減少する中で、同期間にバス定期券の収入は30%以上増えたという事例もありました。

プッシュ型営業の第一歩は「看板」

湘南モノレールで最初に行ったプッシュ型営業は、江の島から洲鼻通りを歩いてきたお客様の目に留まるように、江ノ電の江ノ島駅手前に看板を設置したことです。

江の島―大船間をわずか14分で結ぶ、「速い」湘南モノレールの利用を促す内容であり、疲れている「帰り」のお客様は、少しでも早く東京に帰り着きたいだろうという気持ちに訴求したわけです。細かいことのように思われるかもしれませんが、こうした施策も積み重ねれば、それなりの効果が出るものだと思います。

――みちのりグループは、M&Aで取得した企業をすぐに売却することなく持続的に成長させる、地元に根を張るような事業手法をとられています。地元自治体との協力関係の構築が重要になりそうですが、湘南ではどのような感触でしたか。

沿線自治体としては、鎌倉市・藤沢市がありますが、とくに鎌倉市はロードプライシングをはじめ、マイカーでの観光客の来訪に歯止めをかける政策を検討しています。そうすると、湘南モノレールも含めた公共交通事業者が輸送人員を増やすことができなければ、来訪者数を維持できません。こうした背景を考えれば、地元自治体とも協力してやっていけるものと考えましたし、実際にこの6年間、いろいろと協力してやってきました。

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