買収6年「湘南モノレール」、高い買い物だったのか

2015年に「みちのりグループ」入り、全通50周年

――新体制になってからは積極投資を進め、沿線からはとくにサービス面で「非常に良くなった」という声が聞かれる反面、「みちのりは高い買い物をしたのではないか」というような声も聞かれます。

最新型の5000系。7編成目となる「ピンクリボン号」が2016年5月にデビューし、全車両が5000系となった(写真:湘南モノレール)

まず、車両に関しては最新型の5000系の導入を進めましたが、車両を定期的に更新していかなければならないことは事前にわかっていましたので、それは契約時の譲受価格に織り込みました。また、ICカードの導入に関しては、グループ内のバス事業ですでに導入した実績があり、比較的大きな投資にはなるものの償却は十分可能であることは経験済みでしたから、これも問題ありませんでした。

譲受に当たって最も評価が難しかったのは、建設から50年近くが経過している軌道構造物の維持メンテナンスにどのくらいの費用がかかるのかでした。これは実際にやってみないとわからない面があるわけですが、問題ないだろうと判断できる格好の材料がありました。それはドイツのヴッパータール空中鉄道です。

同鉄道は建設からすでに100年以上が経過しているにもかかわらず、今もって支障なく現役で運行されています。つまり、計画的にメンテナンスを行えば、湘南モノレールの鋼鉄製の構造物も、まだまだ大丈夫ということができます。実際、費用もなんとか予想の範囲に収まっています。あとは湘南江の島駅のリニューアルに思ったよりも費用がかかりましたが、地域のランドマークとなるような駅ビルを建てなければ意味がありませんでしたし、同時にバリアフリー化を進めることで集客の増加も実現しましたから、妥当な出費だったと考えています。

6年間で変わった社員のマインド

――建設から50年を超す構造物の管理にあたる現場の苦労についてどう見ますか。

みちのりグループCEO兼湘南モノレール会長の松本順氏(筆者撮影)

先ほど、きちんと計画的にメンテナンスを行えば、100年以上持つと言いましたが、この「きちんと」というのは「言うは易く、行うは難し」です。メンテナンスには、技術力に加え、注意深さや時間のかかる作業をいとわない根気が求められます。これらの集積によって、初めて安心かつ安全な輸送が実現します。その労力は、正直に言えば私が想像していた以上でした。

こうした尊い仕事に社員が誇りを持てるようにすること、また、経営側はその誇りを大切にすることを、常日頃から意識しています。

――2015年の湘南モノレール新体制発足から6年が経ちますが、この6年でどのような部分が一番変化したと考えますか。

マーケティングの面、つまり情報発信やイベント企画等を通じた集客は、前述したベストプラクティスの展開や尾渡英生社長をはじめ社員の努力により、効果が出ていると思います。変化という意味で顕著なのは、社員の中でもとくに幹部クラスのマインドの変化だと思います。

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