インドが対中国境に5万人の兵力を増強した訳 軍事戦略の中心を印パから印中へと大転換

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インドはヒマラヤ山脈の国境沿いにある中国との係争地で少なくとも5万人の兵士を増員し、対中軍事戦略で大きな転換を示唆している。

両国国境を巡る対立は1962年の軍事衝突に端を発するが、インドは独立以後、主に対パキスタン戦略に重点を置いてきた。印パ間ではこれまでにカシミール地方の係争地を巡り3度の戦争が勃発。だが昨年、インド・中国間でここ数十年で最大規模となる衝突が発生。以後、モディ政権はパキスタンとの緊張関係緩和を図る一方で、中国との紛争に集中する構えを示している。

中印の国境巡る衝突、なぜ再び起きているのか-QuickTake

事情に詳しい関係者4人によると、インドはここ数カ月間に部隊と戦闘機中隊を中国との国境沿いの3地域に移動させた。国境に重点配備された兵士は現在約20万人で、昨年と比べ40%余り増えていると関係者のうち2人が明らかにした。

中国との国境地帯を走る軍用トラック(インド・ラダック地方、6月13日)Photographer: Yawar Nazir/Getty Images

インド軍と首相官邸の報道官にコメントを要請したが、いずれからも返答はなかった。

関係者1人によると、インド軍の係争地駐留はこれまで中国側の動きを阻止することを目的としていたが、今回の兵力再配備により「攻撃防御」と呼ばれる戦略を用い必要に応じて中国領への攻撃や占拠を行う選択肢を増やすことが可能となる。

中国が国境にどの程度の兵力を駐留させているかは不明だが、中国人民解放軍が最近、ヒマラヤ山脈の国境沿いにある係争地の監視を担当する軍管区にチベットから追加兵力の配備を行ったことをインド側が確認。関係者2人によると、中国はチベットの係争地沿いに、新滑走路や戦闘機を収容するための防爆バンカーの整備を進め、ここ数カ月間で長距離砲や戦車、ロケット部隊、双発戦闘機なども追加投入しているという。

中国外務省の汪文斌報道官は北京で28日開いた定例記者会見での質疑応答で、インド国境の「現状は全般的に安定しており、関連する国境問題を解決するため双方が交渉中だ」と述べ、「そのような状況下で、関連する軍と政治指導者の言動と軍事的展開は情勢を和らげ、相互信頼を高めるものでなければならず、その逆ではあってはならない」と論じた。

インド軍の北部司令部を率いたD・S・フーダ退役中将は「国境管理の手順が壊れた今の状態で、いずれの側にせよ非常に多くの兵士を配置するのはリスクが大きい。双方が国境の係争地帯を積極的にパトロールする公算が大きく、現地での小さな出来事が手に負えない状況に陥り、不測の事態を招く可能性がある」と指摘した。

27日の報道資料によれば、インドのシン国防相は陸軍参謀長らを伴い軍備を検証するためラダック地方に入っている。

インド軍の兵士(ラダック地方、2月)

原題:India Shifts 50,000 Troops to China Border in Historic Move (1)(抜粋)

(7段目以降に中国外務省の記者会見などを追加して更新します)

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著者:Sudhi Ranjan Sen

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