アメリカの「インフレ深刻度」のやさしい見極め方 ある「重要な指標」を見ておく癖をつけよう
7月のマーケットを考えるうえで、改めて6月15-16日に開かれたFOMC(連邦公開市場委員会)を振り返ってみよう。結論から言えば、やはり市場の想定以上にタカ派的な内容だった。
FRBは雇用重視から、インフレ警戒に姿勢を転換
FRB(連邦準備制度理事会)が政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標は0.00%-0.25%のレンジで据え置き、債券購入プログラム(アメリカの財務省証券を毎月800億ドル、住宅担保証券(MBS)を400億ドル買い入れ)にも変更はなかったが、これは大方の予想通りだった。
一方で同時に発表されたFRB高官の景気やインフレ見通しに関しては、2021年度の個人消費支出(PCE)価格指数が3月時点で前年比2.4%だったのが3.4%に、エネルギーと食品を除いたPCEコアが2.2%から3.0%にそれぞれ引き上げられた。
「ドットプロット(チャート)」と呼ばれる政策金利見通しに至っては「2023年末までに少なくとも1回の利上げがある」との予想が参加者18人中13人と、3月時点の7人から大幅に増加した。
平均をとれば「2023年末までには少なくとも2回の利上げがある」との見通しとなるわけで、これはかなりのサプライズと言ってもよいだろう。発表後に同国の長期金利が急上昇、株価にも大きな調整圧力が強まったのも、極めて自然な反応だった。
FRBのジェローム・パウエル議長は声明発表後の会見で「将来、インフレが思った以上に大きく上昇するリスクはないのか」との質問に対し、明確に認めた。また、テーパリング(量的緩和の段階的な縮小)開始の検討に関しても「テーパリングの議論を開始すべきかの議論」という、持って回った言い方ながら、議論が始まったことを明らかにしている。やはり前回4月の会見では「考え始めるにも至っていない」と答えていたのだから、大きな変化だ。
さらに、パウエル議長は、これまで「労働市場がしっかりと回復してくるまで、金融緩和の方針を変更することはない」との姿勢を堅持していた。だが、これに関しても「労働市場はしっかりと回復してきており、今後もこうした勢いが続く」と、すでに当局の後押しが必要ではなくなったかのようなニュアンスの発言をするに至っている。やはり、これはFOMCが方針を転換、金融引き締めへの道筋をつける第一歩を踏み出したと考えてよいのではないか。
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