余命意識する人の最期支える「人生会議」のリアル 患者が望む医療・ケアの優先が一層求められる
「まてまてまて、俺の人生ここで終わり?大事なこと何も伝えてなかったわ」
今から約2年半前の2018年11月、厚生労働省は、自らが望む人生の最終段階の医療・ケアについて話し合う、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)を「人生会議」という愛称に決めた。
厚労省が普及啓発のために、タレントの小藪千豊さんを起用して作成したPRポスターが「家族を傷つける」と患者団体などから批判を受け、厚労省が自治体への発送を中止したことを覚えている方もいるだろう。結果的にはこれが世の中にACPの認知度を高めることにもつながったといえる。
ACPは患者、その家族と何度も話し合い文書にする
埼玉医科大学病院(埼玉県入間郡毛呂山町、篠塚望病院長、970床)の救急科・緩和医療科の岩瀬哲教授は、人生会議という言葉が出てくる約20年前、東京大学病院(東京都文京区)に勤務し、緩和ケア診療部副部長として緩和ケアチームを率いながらACPに取り組んでいた。2002年4月に診療報酬で一般病床の入院患者に対する緩和ケアチームによる活動を評価する「緩和ケア診療加算」が新設され、東大病院に緩和ケアチームが発足したタイミングだった。
緩和ケアチームとは、緩和ケアを提供するために、身体症状の緩和を担当する医師のほか、心のつらさを和らげる医師、看護を担当する看護師(認定看護師)、薬剤師、栄養士、理学療法士、ソーシャルワーカーなどが、主治医、病棟看護師と協力して働く専門のチームのことを指す。医療職が一丸となって、患者のケアをする。
ペイシェント・ジャーニー(Patient Journey=病気に罹ってから始まる病気を抱えた人としての旅)という言葉がある。局所的な症状緩和にとどまらず、患者の生き方に寄り添って、継続的にケアを続けるのが緩和ケアチームで、その手段としてACPがある。ACPとは、今後の治療・療養について患者とその家族、医療従事者があらかじめ話し合い、それを何度も繰り返す一連のプロセスだ。
この国にACPの考え方がほとんど定着していなかった当時、岩瀬氏が頼りにしたのが、全米総合がんセンターネットワーク(NCCN=National Comprehensive Cancer Network)のエンド・オブ・ライフ(終末期・寿命の終わり)におけるACPのガイドラインだった。
このガイドラインは、治療中の患者に対して予想される余命を、月・週単位、さらには週・日単位に応じて、医療チームが介入(関係やかかわりを持つ)する手順と、評価(チェック)する方法を明示したものだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら