都議選スタート、「結果は小池知事次第」の選挙に 知事入院で都民ファースト大苦戦、自民奪回か

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これも踏まえ、自公両党の候補者は選挙活動で五輪開催や観客の有無への言及は避ける構えだ。ただ、選挙期間中に感染が拡大すれば、改めて五輪開催の可否が最大の争点となるのは確実。投開票日までに感染爆発の兆しが明確になった場合、都民ファーストが掲げる無観客開催が有権者の支持を集める可能性も否定できない。

その一方、各陣営とも小池氏の動向に神経をとがらす。2016年夏の小池都政誕生以来、自民は都議会で小池氏と対決してきた。しかし、2020年7月の都知事選では小池氏を実質的に支援するなど、対立関係を解消しつつある。

小池知事は都議選への対応を明確にせず

東京五輪について、小池氏はこれまで菅首相とタッグを組む形で開催に突き進んできた。最新の世論調査でも都民の小池氏への支持は高水準を保っている。今回の都議選での都民ファーストの消長は、「小池氏の全面支援が得られるかどうかで決まる」(都民ファースト幹部)とされ、それが他陣営の選挙戦略にも影響するとみられている。

ただ、小池氏は告示を迎えた段階でも都議選への対応を明確にしていない。都民ファーストの各候補が小池氏の応援演説を切望する一方、自民都連は小池氏と二階氏の「談合」に期待を隠さず、選挙期間中も小池氏をめぐる都民ファーストと自民の綱引きが続きそうだ。

だからこそ、入院した小池氏の体調といつ公務に復帰するのかが注目されるのだ。小池氏が予定通り週明けの28日から復帰したとしても、五輪開催への準備とコロナ対策に忙殺されるのは確実で、「街頭演説などの選挙活動は自粛せざるを得ない」(周辺)との見方も少なくない。

すでに、自民党など各陣営の非公式の事前情勢調査を踏まえ、「自民50議席超、都民ファースト10議席程度」という数字も流されている。このため、「菅首相も街頭演説に意欲的」(自民幹部)とされる一方、小池氏については「流れに抵抗せず、体調などを理由に様子見を決め込むのでは」(公明幹部)との声が広がる。

ただ、ここにきての東京での新規感染者数は「もはやリバウンド状態」(感染症専門家)とされる。今後も感染拡大が進めば「コロナと五輪問題で選挙戦の様相も大きく変わる」(選挙アナリスト)可能性も少なくない。今回の「都議選狂騒曲」は、7月4日の投開票日ぎりぎりまで続くことになりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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