アップルが「最強の資金繰り」を維持できる理由 決算書から読み解く「アップル躍進」の秘密

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CCCの計算式は次の図のとおりです。

(出典:『カンタン図解で圧倒的によくわかる!【決定版】決算書を読む技術』)

在庫回転日数の短さは驚異的

しかし、このような計算式を見せられてもなかなかピンとこないと思います。そこで、タイムライン型取引フロー図の出番です。

タイムライン型取引フロー図とは、取引フロー図の登場人物(ここでは、会社、顧客、仕入先等の3者)を左端に配置し、線で3者の領域を区切り、時間が左から右に流れていると見立てて、時系列で実線矢印および点線矢印を配置します。実線矢印は商品・サービスの動き、点線矢印はお金の動きを表します。

(出典:『カンタン図解で圧倒的によくわかる!【決定版】決算書を読む技術』)

在庫回転日数とは、仕入先から商品を受け取ってから、顧客に商品を引き渡すまでの平均的な日数です。図でいうと①の部分です。

売上債権回転日数とは、顧客に商品を引き渡してから、代金を回収するまでの平均的な日数です。図でいうと②の部分です。

仕入債務回転日数とは、仕入先から商品を仕入れてから、仕入先に代金を支払うまでの平均的な日数です。図でいうと③の部分です。

計算式にしたがって説明すると、①と②の合計から③を差し引いた部分がCCCです。この部分は図を見ればわかるように、仕入先への支払日から顧客からの回収日までの間の平均日数です。すなわちCCCとは、お金の支払日から受領日までの期間のことなのです。

このCCCを改善する(短くする)方法は次の3つです。

①を短くする(仕入れたらすぐ売る)
②を短くする(代金回収を早くする)
③を長くする(代金支払いを遅らせる)

2019年度、同業のソニーは、CCCがプラス71日です。これに対してアップルは、CCCがなんとマイナス61日。

中でも驚異的なのが、①の在庫回転日数がたったの9日という点です。すなわち、不要な在庫は保有せず、作ったらすぐに販売できる体制がアップルには出来上がっているのです。

また、③の仕入債務回転日数91日も驚異的です。すなわちアップルは、材料の仕入代金の支払いを、仕入日から約3カ月も先に行っているということです。

このように支払期間が長く設定されているのは、アップルが電子部品メーカー等に対して、圧倒的に有利な条件で取引できる力関係にあるためです。

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