ヤマトに食われる日本郵便「小型荷物」減少の深刻 メルカリ向けを巡り、両社で明暗がわかれる

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また、ロボットやドローンを活用したラストワンマイル配送も着々と進める。2020年10月には日本初となる配送ロボットの公道走行の実証実験を行い、2021年6月15日にはドローン専業メーカーの自律制御システム研究所(ACSL)と資本業務提携を発表した。

日本郵政キャピタルはACSLに約30億円を出資し、2023年度をメドにドローン配送の実用化に向けて連携する構えだ。日本郵便の衣川社長は「ドローン配送はコスト削減にも一定の効果があると思っている。ローコスト化を進めて収益向上につなげたい」と期待を寄せる。

ドローンで配送時間が半減

日本郵便とACSLは2017年から実証実験を重ねており、2019年には無人地帯で、ドローン操縦者が直接視認不可で、補助者なしの「レベル3飛行」による宅配便の配送を実現している。東京都奥多摩町で行った実証実験では、配送にかかる時間を従来の半分に減らすなど、一定の効果を得られたという。

日本郵便とACSLは郵便物や小型荷物の配送でドローン活用を目指す(写真:記者撮影)

日本郵便の五味儀裕オペレーション改革部長は「とくに人口の少ない地域では物流の担い手を確保するのが難しくなっている。配送効率の悪いエリアでドローンを活用するなどの業務改革が、郵便・物流サービスを維持するうえで不可欠だ」と語る。

とはいえ、ドローン配送などのインフラを整えても運ぶ荷物がなければ意味がない。楽天以外の顧客からも十分な荷物を確保できなければ、日本郵便の収益改善は遠のいてしまう。楽天と連携強化しつつも、それ以外の顧客を囲い込めるか。オペレーション改革以外にも日本郵便の物流事業には課題が山積している。

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佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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