ヤマトに食われる日本郵便「小型荷物」減少の深刻 メルカリ向けを巡り、両社で明暗がわかれる

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実際、2020年11月に日本郵便はメルカリと連携し、小型郵便を郵便局の窓口やコンビニで出荷する必要がなく、直接郵便ポストから発送できるサービス「ゆうパケットポスト」を始めた。それでも、ネコポスの価格攻勢に押され、ゆうパケットの減少は免れなかった。

小型荷物の競争が激化するなかで、日本郵便にとって頼みの綱となるのが楽天だ。2021年7月に両社は合弁で「JP楽天ロジスティクス」(出資比率は、日本郵便 50.1%、楽天 49.9%)を設立し、物流拠点の共同運営をするなど連携を強化している。

さらに、日本郵便は2025年度の宅配便の取扱個数を13.6億個と見込んでいるが、そのうち約22~36.7%を占めるおよそ3~5億個が、楽天から配送受託する荷物になる想定をしている。日本郵政の増田寛也社長は「楽天からの配送受託は安定しており、大きく荷物を拾っていく」と期待を寄せる。

日本郵便は業績不振が続く見通し

だが、そうした荷物が業績に貢献するのにはまだ時間がかかりそうだ。日本郵便の足元の業績も厳しく、2021年3月期の通期決算は減収減益となった。2022年3月期も柱である郵便・物流事業の減少をカバーできず、営業利益は前期比50%減の650億円で、大幅な減益となる見通しだ。

郵便物減少による事業縮小は中長期的にも避けられない。2021年5月に公表された日本郵政グループの中期経営計画によれば、最終的には業績が上向く想定の金融2社とは異なり、日本郵便だけは業績不振が続く見通しだ。郵便・物流事業は、2025年度に営業利益330億円を見込んでいるが、これは2020年度比で7割超の減益となる。

宅配便の荷物確保が進まない日本郵便は、業務効率化による収益改善を先行して進める構えだ。2025年度までの5年間で、日本郵便は約3万人相当分の業務を削減することで人件費を1600億円減らす計画を掲げている。その際、郵便・物流事業のオペレーション改革にはおよそ1000億円が投じられる。

これまでも日本郵便は、先端技術の実用化によるオペレーション改革を積極的に進めてきた。2020年6月から物流ベンチャー2社と協業し、配送業務の支援システムを試験導入。スマホ画面上で配送状況に応じた最適なルートを提案するなど、ドライバーの業務負荷低減と新人ドライバーの即戦力化を急いでいる。同システムは、2022年3月末までに最大500の郵便局での導入を目指す。

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