アマゾンと並ぶ「巨大銀行」へ向かうアントの威力 銀行業界を飲み込む"もうひとつの強大な力"

印刷
A
A

このようなアセットを武器に、アリペイにキャッシュを入れておくだけで利回り約7%というサービスも一時期ですが提供していました。アリババグループで使っている与信やローンの事業のアルゴリズムを、ほかの金融機関に提供することでも利益を得ています。

規制の緩い中国だからこそ発展できた

しかしこれらの金融サービスは、明らかに銀行業務です。そのためアントが行うには、免許を取得する必要があります。しかし、そこは中国。アメリカなどの民主国家に比べると、トップがイエスと言えば業種の壁を簡単に越えることのできる環境ですから、ここまで自由にビジネスを展開でき、大きく成長できたのです。

ただアリババの創業者であるジャック・マー氏は、拡大をしすぎたかもしれません。従来の政府が作ったシステムは古すぎる。これからの金融サービスならびにシステムを構築するのは、ハイテク企業であるわれわれだと。中国政府を刺激するような発言が、アントが上場直前に報道されました。2020年のことでした。

その結果もあってか、これまで自由に行っていた金融サービスが行えなくなりました。同時に、2020年最大、約30兆円規模で上場すると思われていたアントの上場も白紙となりました。

一方で、デジタル通貨の普及に関しては、政府と手を組んで進めています。おそらくアントならびにアリババグループとしては共存のための動きと私はみています。

ただし、アントが進めているデジタル通貨事業は、今後、世界の金融マーケットにおいて、大きな存在感を示すことは間違いありません。中国全土で利用が広まっているエコシステムであるアリペイを、プラットフォームとするはずです。圧倒的なエコシステムを背景に、政府としてはデジタル人民元を一気に普及させたい意図が垣間見えます。

重要なのはそこから先の動きです。中国政府は中国に限らず、中華圏のエコシステムとなっているアリペイを活用し、デジタル人民元をアジアなどアリペイがすでに普及しているところに地域のデジタル通貨として広めたい。このような戦略がうかがえるからです。

デジタル人民元でないとしても、アリババのテクノロジーを活用して、他国のデジタル通貨の開発を担うことも、十分ありうるでしょう。

アメリカとの関係が近くない東南アジアの諸国が、中国と手を組んでデジタル通貨を開発することは十分に考えられますし、そのような未来が訪れれば、これまで強かった米ドル、そして日本円にも影響を及ぼす可能性があります。

アメリカ政府は自分自身が世界最大の通貨であるドルを持つがゆえにスピード感こそ中国と比べると圧倒的に遅いですが、動向次第で今後はデジタル通貨に本腰を入れてくることでしょう。アメリカ中央銀行のFRBは2020年夏に中央銀行デジタル通貨に関する報告書を公表するとしています。運営にはクラウドが必須です。すでに政府のシステムでも実績のあるアマゾンの運営するAWSやマイクロソフトの運営するアジュールなどが関係してくると予想されます。

次ページデジタル通貨の二大巨頭が業界をリードする可能性がある
ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
工場が消える!脱炭素が迫る最後の選択
工場が消える!脱炭素が迫る最後の選択
ファミマと伊藤忠が狙う「セブン-イレブン1強体制」打破の勝算
ファミマと伊藤忠が狙う「セブン-イレブン1強体制」打破の勝算
ガストがあえて「低価格メニュー」の拡充に走る根本的な理由
ガストがあえて「低価格メニュー」の拡充に走る根本的な理由
マンションで急増「宅配ロッカー」が突く新課題
マンションで急増「宅配ロッカー」が突く新課題
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
  • 新刊
  • ランキング
東洋経済education×ICT