中学受験「中堅校の特別コース」注意が必要な理由 志望校の「ケース別」に最適な勉強法を紹介

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これらに加え、科目や出題傾向にも点数が安定しにくい要素があると考えられます。高校入試や大学入試であれば、理科・社会の知識問題をはじめ英語や古典など、比較的点数が安定しやすい科目の配点が高くなります。とくに、英語の配点が高いことが多く、安定しにくい現代文や数学の応用問題は、そもそも相対的な配点が大きくないのです。

ところが中学受験では、現状、ごく一部の例外をのぞいて英語の試験はありませんし、難関校では理科・社会の配点を小さくするところが多いです。公立の中高一貫校に至っては、知識問題がいっさい出題されないというところもあるくらいで、対策なしでは点数が安定しにくくなっています。

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そこで重要になってくるのが、本番にできるだけ近い条件での演習です。
受験校の傾向、難易度に合った問題を、本番を想定した時間配分で解く訓練をしていないと、偏差値的にはかなり余裕がありそうな学校でも苦戦する可能性が高くなります。第1志望校だけではなく、傾向が近い併願校の過去問も、できるだけ解いておくほうが有利でしょう。

また、実際に受験会場となる中学校で模試や「プレテスト」を受けておくのもよい経験になります。「プレテスト」というのは、学校側が主催する入試体験イベント。大阪桐蔭や清風南海の「プレテスト」、北海道・立命館慶祥の「立命模試」は上位者が多く受験するテストとして定着しているほか、人気の公立中高一貫校と同タイプの「プレテスト」を行う学校も増えています。

関西難関校の「東京会場入試」も有効

同様に、志望校の受験日前に合格発表がある「前受け校」も可能なら受験しておいたほうがよいのですが、その場合は志望校と傾向が合っていることが前提になるでしょう。傾向があまりに違う「前受け校」の受験は、過去問対策などそれ自体の負担が大きいうえに、合格できずにかえって精神的に不利になってしまうリスクも大きいからです。

東京の受験生の場合、埼玉や千葉の学校を受けるケースが多くなっているようですが、必ずしもそれらの「前受け校」が本命校の傾向に合っているわけではないので、地方校も含めて検討できているほうが有利になるはずです。傾向的には、志望校が難問型なら西大和学園、比較的易しい問題も多いなら愛光学園の東京会場入試が使いやすそうです。

天流 仁志
てんりゅう ひとし / Hitoshi Tenryu

1982年北海道生まれ。東京大学法学部卒。教育水準が低いとされる地元の公立小中学校から鹿児島のラ・サール高校に進学、学力の地域格差への問題意識から受験技術の研究を始める。高3では全国模試でTOP10に入る成績を連発。東大入学後も通信指導を含む複数の塾・予備校でさまざまな学力層の生徒を指導、受験技術研究を重ねる。現在はGLS予備校の教務主任として、札幌の教室と通信添削コースで少数の生徒を指導しながら、最新の研究を反映したカリキュラムやオリジナル教材を作成している。天流仁志の受験情報ブログも運営。著書に『学習の作法(増補改訂版)』(中高生向け)、『親と子の最新大学受験情報講座(文系編)』 (ディスカヴァー)など。

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