マツダ初EV「MX-30」、なぜ日本では売れない? HV技術がなく、EV戦略での遅れや焦りが要因か

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観音開きドアを採用したMX-30。写真はマイルドハイブリッドモデル(写真:マツダ)

3代目までRX-7が進化を遂げたあと、4ドアスポーツカーとして「RX-8」をマツダは生み出した。2+2(ツー・プラス・ツー=前後に2座席)の4人乗りスポーツカーとし、走行性能は落とさず、それでいて観音開きの4ドア機構を採用し、後席への乗降性も考慮されていた。後席の座り心地は快適だった。

この観音開きドアは、のちにBMWのEVである「i3」で採用され、MX-30でも採り入れられた。MX-30も後席の快適性は十分だ。RX-8、そしてi3やMX-30でも、観音開きの4ドア機構は、乗降性という実用性と、外観の造形の魅力を両立する優れた着想だ。

SKYACTIV技術を生かしたエンジン開発

エンジン技術においては、SKYACTIVと名付けた一連のガソリンとディーゼルは、エンジンの高効率化という本質を追求した優れた開発で、フォルクスワーゲン(VW)の元会長であるフェルディナント・ピエヒをして、「本来はわが社が取り組むべき技術だ」と言わしめたとの話もある。

以上のように独創の魅力に挑戦し続けるマツダの、そうした信念に基づいた粘り強い姿勢が、フランスのル・マン24時間レースで日本の自動車メーカーとして初優勝する金字塔も打ち立てた。

マツダ3やCX-30に搭載されている新世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」(写真:マツダ)

とはいえ、マツダMX-30の評価は、まだ十分とはいえないのではないか。それは、EVに対する備えが整わないまま投入したせいであるように思える。SKYACTIVエンジンの開発に際し、「うちにはHVがないのでエンジンを開発するしかなかった。HVがあれば、こんな苦労はしなくてよかった」という声がある。慣れ親しんだエンジン車の販売という既存の資源を維持し、経営を改善しようとの思いも強かったのだろう。SKYACTIV開発の手法に間違いはない。

しかし、地球環境保全へ向かう世界の動向はすでに転換期を迎えようとしていた。欧州における二酸化炭素(CO2)排出量の規制強化は、何年も前から動き出していた。それに対し、欧州の自動車メーカーはディーゼルターボエンジンで乗り切ろうとしたが、2015年のVWによる排出ガス偽装問題で破綻し、一気に電動化へ舵を切った。

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