「未使用の新聞紙がアマゾン大量出品」の深い事情 ペットトイレ用で販売、実は新聞の苦境を反映

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次に筆者は、海部郡に隣接する名古屋市における朝日新聞のABC部数を調べてみた。

ABC部数の解析(図表:弁護士ドットコム)

名古屋市でも、ABC部数のロック現象が頻繁に確認できる。中区のように8期(4年)に渡ってロックされている区もある。

ちなみに名古屋市全域のABC部数は、2016年4月の時点で7万1674部だったが、2020年10月には、5万7903部に激減している。こうした傾向の中、4年のあいだ中区の朝日新聞購読者が1部の増減もないことはまずありえない。購読者が減っていれば、残紙が発生している可能性が高い。

名古屋市においても、新聞の読者ばなれと部数のロックにより、残紙が発生するメカニズムが裏付けられるのである。残紙ビジネスの温床があるのだ。ただ、今回は残紙を回収する具体的な搬入ルートまでは解明できなかった。

年単位で部数が変わっていない理由について朝日新聞に尋ねたが、同社広報部の回答は次のようなものだった。

「本社は、ASAからの部数注文の通りに新聞を届けています。 ASAは、配達部数の他に、営業上必要な部数を加えて注文しています。(注:ASAは朝日新聞販売店)」

新聞ジャーナリズムの尊厳

紙業タイムス社が編集した『知っておきたい紙パの実際』(2020年6月17日)によると、紙の消費は「世界で生産される紙・板紙のうち2割足らずの人々が全体の半分程度を消費し、残りの半分強を8割以上の人たちで消費するという構造になっている」という。日本は、生産・消費とも世界第3位である。

新聞販売の諸問題が国会質問ではじめて取り上げられたのは1981年である。1982年3月8日には共産党の瀬崎博義議員が、読売・新聞鶴舞直売所(奈良県)の内部資料(『北田資料』と呼ばれる)を暴露して、残紙問題を追及した。その後、1985年まで、共産党、公明党、社会党が超党派で13回にわたり残紙や新聞拡販の過当競争などについて、国会追及を繰り返したのである。

さらに2010年6月16日には、自民党の稲田朋美議員が「新聞の『押し紙』についての実態解明を求める請願」を提出している。最近では、2018年6月14日に、自民党の和田政宗議員が、「押し紙」問題を取り上げている。

残紙は40年に渡って、国会で問題になっているのである。が、新聞社は報道もしなければ、残紙の責任も認めていない。残紙の存在は認めても、それはすべて販売店が注文した予備紙であり、販売店の責任であると一貫して主張してきた。

しかし、残紙は新聞ジャーナリズムの尊厳にかかわる問題である。その問題の解決を避けてきた結果、アマゾンや楽天で新聞が「犬用品」、つまりは「ペットの便所紙」 として販売される事態に陥ったのである。

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