「一人っ子政策」でも中国の若者に兄弟が多い謎 中国人ですら把握できないほどの例外規定も

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一方で罰金や裏技によって生まれた人々もいた。

遼寧省の農村出身の女性(29歳)はこう話す。「1人目が女の子だったから、両親は第2子を持つことを許されました。だけど第2子、つまり私たちは双子だったんです。結果子どもの数が3人になり、1人分罰金を払ったと聞いています」。

彼女が自身の体験を話すと、中国人からも「そんなことあるの?」「双子なんて自分では決められないのに」と驚かれるという。ちなみに、双子のうちどちらにいくら罰金が科されたかは家族内でも明かされていないそうだ。

内モンゴル出身の包雪梅さん(仮名、26歳)も、罰金を払って生まれた子だ。モンゴル族の包さん一家は2人の子を持つことが許されていたが、地域ルールで「満2歳以上は離れていないといけない」と決まっていたにもかかわらず、年子になってしまったため、両親は包さんの出産で800元(約1万4000円)の罰金を納めたという。

「1995年だしうちは田舎だったので、親にとっては給料数カ月分の額だった。罰金の件を知ってからは、『私を産んだからうちは貧乏になったのではないか』と申し訳ない気持ちでいっぱいだった。親は『家族が多いほうが幸せ』と言い続けてくれたけど」

戸籍上は少数民族だが、実際は漢族という女性もいた。いわく、「中絶の強要や罰金を免れるため、両親が少数民族の親友に相談し、その人の第2子として届け出た」そうだ。ただ、その女性は実の両親の下で育っており、詳細は知らないものの地域で黙認されていたのではないか、と推測する。

もう1人育てる余裕がない

中国は一人っ子政策を2015年に撤廃した際、同年に1655万人だった出生数が2000万人に増えると試算していた。たしかに2016年は1999年以来の高水準となる1786万人に増えたが、2017年には1723万人と減少が始まり、以降は毎年過去最少を更新し、2020年には約1200万人になってしまった。

子どもが増えない最大の理由は、長年続いた一人っ子政策と同期間の経済成長を背景に、両親と祖父母が子ども一人に“全投資”し続けた結果、子育てにとんでもなくお金がかかるようになったからだ。

小学校に上がる前から英会話や算数の塾通いは当たり前で、最近は芸術やスポーツの習い事も外せなくなっている。オンライン英会話が浸透し、地方でも高い授業料を払ってネイティブに習う選択肢ができてしまった。「一人っ子」を前提とした教育システムにがんじがらめになり、もう1人育てる余裕がある家庭は多くない。

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