女優・いとうまい子が「研究者」の道に進んだ理由 40代で早大入学彼女が見つけた学びなおしの道
それを実践できるようになったと感じたのは、学部3年生になる前のゼミ選択でした。
入学時から授業を取り続けていた予防医学のゼミに進むつもりだったのですが、担当の先生が退官することになってしまい、途方に暮れて20歳の同級生に相談したんです。そしたら、「ロボット工学のゼミがおすすめです」って言うんですよ。
それまでプログラミングの授業は取ってこなかったし、ロボットに関する知識も全然ない。そんな私に、ロボット工学を提案するの?って驚きました(笑)。
でもその子は、なんとなく私に合うだろうな、と思ってすすめてくれたはず。そう思って、提案を受け入れることにしたんです。
気づけば「夢」へ近づいていた
実際にロボット工学のゼミに入ってからわかったのですが、ロボット工学と予防医学は大変相性のいい学問でした。
地方の高齢者の多くが悩まされている「ロコモティブシンドローム」(運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態になること)の予防にロボットの研究が役立つと気づき、正しいスクワットができる「ロコモ予防装置」を開発。
それを国際ロボット展の早稲田大学のブースで展示していると、たまたま通りがかった企業の方が、「もし大学院でも研究を続けるなら、一緒に何かやりたいね」と声を掛けてくださったんです。
当時は大学院へ行くつもりなんてまったくありませんでした。でも、その一言をきっかけに進学を検討し、「まだまだ恩返しできるほどの学びはできていない」と考えて修士課程に入学。卒業後は博士課程に進学しました。
私が現在研究しているのは「基礎老化学」。共同研究をしている東京大学で細胞培養をしながら、博士号の取得を目指す日々を送っています。
ロボット工学の教授が博士課程を持っていなかったのですが、どうしても博士課程に進みたく、大学へ交渉し修士課程で講義を取り続けたバイオの世界に進ませてもらいました。でも今では、老化学を研究する道に進んでよかったと思っているんですよ。
なぜなら、ロボット工学では筋肉が衰えない仕組みを考えてきましたが、老化学では体の内側から老化を止める仕組みを考えていける。つまり、老化の「予防」という目標に対して、骨格と細胞の両方からアプローチしていけるからです。
また幸運なことに、ロボット開発も大学の外で継続できることになりました。
修士課程の在籍中に開発した介護予防ロボット『ロコピョン』をエクサウィザーズ会長の春田さんが目に留めてくださったのがきっかけで、現在は同社のフェローとして、高齢者の健康維持に貢献するロボットの共同開発に取り組んでいます。