女優・いとうまい子が「研究者」の道に進んだ理由 40代で早大入学彼女が見つけた学びなおしの道
転機が訪れたのは、30歳のとき。兄の飼っていたゴールデンレトリバーを預かったことがきっかけです。
その子は犬ですからね、お世辞も言わなければ、高価な洋服も着ていない。ありのままの姿で存在していました。私はその佇まいを見て、唐突に思い知らされたんです。「生きるってこういうことなんだ」って。
大人っぽくなりたい一心でやってきたことは、間違いだらけだった。そう気づいてからは、しがみつくのをやめました。
ありのままの自分を表現して気に入ってもらえないのだとしたら、そこは私の居場所じゃない。そのときは違う場所にいけばいい。そんな覚悟すらできました。
それからしばらくして、ドラマ『中学生日記』の先生役を務めていたときのこと。ディレクターさんが「あなたは話が面白いから、コメンテーターの仕事もやってみたら?」って言ってくださって。いざ挑戦してみると、それ以降も自然と話すお仕事をいただけるようになっていきました。
デビューしたての頃だったら、「こんな仕事が向いてるよ」と言われても、「私はそんなタイプじゃない」って突っぱねていたかもしれません。でもこのときに感じた、流れに身を任せて運ばれていく感覚は、決して悪いものではありませんでした。
意地を張るのではなく、人の評価を素直に受け取ってみてもいいのかもしれない。次第に、そう考えるようになっていったんです。
意思決定の基準を切り替えたのは40代
これから先の人生では、周りの評価をフラットに受け入れよう。もし何か提案されたら、素直にその道を歩もう。そう意思決定の基準を切り替えたのは、40代になってからでした。
44歳のとき、早稲田大学の通信課程(e-school)に入学し、学び直しへの第一歩を踏み出しました。
きっかけは「ずっと芸能界でお仕事をさせてもらってきたことへの恩返しがしたい」という気持ちです。
今も、「まい子さんの活動から元気をもらえました」と言ってくださる方がたくさんいます。昔からのファンの方はもちろん、中には最近私を知った方も。
そんな声を聞くと、私のほうが元気をもらっちゃうんですよね(笑)。結局もらってばかりで、その繰り返し。ありがたいからお返しがしたいのに、感謝してもし足りないんです。
恩返しのためにも、人の役に立つことがしたい。そう思って大学へ入学したときに、心に強く決めました。これまで失敗してきたことは、もうしない。昔は意地を張ってばかりだったけど、これからは周囲の提案を受け入れていこう、って。