ガリバーが挑むビッグデータ事業の関門
「LINE」を活用し新たなサービスを開始

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ガリバーは2018年2月期に国内800店、小売り台数15万台、営業利益200億円を目標に掲げており(14年5月末で312店、14年2月期の実績は小売り台数5万台、営業利益70億円)、顧客との関係を強化することで本業との相乗効果を見込んでいる。

自社での情報利用だけでなく、データのオープン化も視野に入れている。走行データを活用することで、保険会社やガソリンスタンドを運営する石油会社、飲食店、娯楽施設などと連携し、送客手数料や決済手数料のような形で提携先の事業者に課金するモデルも検討中だ。「自動車のビッグデータを利用した新しいビジネスモデルを作りたい」と経営企画室の北島昇氏は話す。

課題をどう乗り越えるか

新たなビジネスモデルの確立にはいくつかの課題がある。まずは、提供するサービスでどれだけ多くの利用客を集められるかだ。

クルマに装着する専用の装置。ここから集まる情報がどれだけの価値とサービスを生むことになるのか。

車種によっては走行可能距離を表示する機能が備わっている。街中であれば、ガソリン残量の警告灯が出てから、ガソリンスタンドが見つからず困るケースはほとんどない。広い駐車場で自分の車を停めた場所がわからなくなることはあっても、そうした状況は多くはないだろう。

それだけに、有料でも使いたいと思わせるサービスを1つでも多く増やすことが重要になる。また、当初はサービス対象がアンドロイドOSを搭載したスマホに限られることから、アイフォーンユーザーが取り込めない。利用者拡大のためには、早く”間口”を広げる必要がある。

今後、ガリバーではサービス内容や対応スマホを拡大していく。アイフォーンには年内にも対応の予定。8月のサービス開始時には無料キャンペーンも用意し、ユーザー獲得にも努める。ガリバーでの中古車購入者に限らず、広く会員を募ることも検討しており、初年度は2万のユーザー獲得をめざす。自動車のビッグデータビジネスは、トヨタ自動車など自動車メーカー、アップルやグーグルなども狙う有望な領域。巨大企業を向こうに回し、ガリバーはビッグデータビジネスの橋頭堡を築くことができるのか。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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