中古車業界でイノベーションを起こしたい ガリバーインターナショナル、次の一手

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2008年から社長を務める羽鳥裕介氏はガリバーの「新たなステージ」を強調した(撮影:今井康一)
 社員番号「12番」――。羽鳥兼市氏(現会長)が福島県郡山市でガリバーインターナショナル・コーポレーション(当時)を創業した時、長男の羽鳥裕介氏は大学3年生だった。「卒業しても継がせない」「自分でやっていけ」。父の言葉を素直に受け止め、「ガリバーに入るつもりはまったくなかった」という男は今、社長を務めている。
 創業20周年を来年に控え、足元の業績は冴えない。中古車の買い取りで業界トップを極めたが、卸売り事業の”弱み”も露呈し始めた。成長軌道への復帰を懸け、小売事業への本格展開や大胆な海外進出計画を打ち出し、ここにきて大きく舵を切り始めている。今後の成長シナリオをいかに実現するのか。ガリバーインターナショナルの羽鳥裕介社長に聞いた。

 最も地味な3年間

――昨年から小売りの新業態店を相次いで展開しており、これまでのガリバーにはなかった動きです。

リーマンショック直後、社員に向けて3カ年の中期経営計画を発表した。その中で強調したのは、中古車買い取りで業容を拡大する戦略から、3年後は、消費者に販売する小売事業へとシフトすること。そのための足場固めを計画中にやるというのが社員との約束だった。

小売事業を強化すれば、エンドユーザーである消費者の方々と接する機会も増える。この3年間ではそうしたことを意識して人材育成を徹底した。買い取りの新規出店はできるだけ抑制し、小売事業の強化に備えてきた。ガリバーの歴史の中では、最も地味な3年だった。

昨年8月、再び社員に、「人材も育ち、半年前倒しで攻めるステージにきた」と伝えた。攻めに転じるときは業務量も増えるが、新しいことに挑戦しているという楽しみもあり、会社の雰囲気もよくなってきた。

――なぜ、卸売りから小売りへシフトするのでしょうか。

従来の店舗とはまったく違うたたずまいで小売事業を強化(撮影:風間仁一郎)

卸売りは市況に左右されやすい側面がある。もっとも顕著な例が、昨年の新車販売を押し上げたエコカー補助金の余波だ。新車販売が活況を呈せば流通も賑わい、中古車事業にとってもメリットはある。

ただ、新車ディーラーの販売競争が過熱し、実質的な値引きとなる中古車買い取り価格の引き上げが相次いだ。良質な中古車を確保するために、われわれとしても買い取り価格を引き上げざるを得ない。結果、1台あたりの粗利は急速に悪化した。

卸売りに依存し続ければ、こうしたリスクと常に背中合わせだ。一方、消費者に販売する小売りは卸売りに比べて粗利もいい。収益体質の強化という観点から、小売事業へと軸足を移すことにした。

10年間は川上の攻略に専念

中古車屋を始めるときは99.9%の業者が小売りから始める。ガリバーは父(羽鳥兼市会長)の故郷である福島県からスタートした。当時は当然、知名度もなければ、人も足りない、情報も入ってこない。

全国的な中古車販売店がなかったので、簡単な領域ではないと感じていた。そこで考えたのが、中古車の”発生元”を押さえることだった。

当時の役員同士で決めたのは、中古車の発生元である川上でマーケットシェアの1割を獲得するため、すべての経営資源を投下するということ。

最初の10年間は、中古車の買い取り事業以外は絶対に手を出さない。かりに会社が大きくなって、いい話がきたとしてもキャピタル・ゲイン狙いの投資はしない。ほかの事業も展開しないと約束した。川上をきちんと押さえ、日本で1番中古車を持っている企業になれば、いずれは川下に行けるという考えは当初からあった。

創業時のイメージから随分と遅れたが、何とか買い取りの基盤ができて川下に下りられるタイミングになった。だからこそ、今、小売りに軸足を移している。

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