西九州新幹線「佐賀空港ルート」急浮上の全内幕

佐賀県と国が協議、フリーゲージ時速200km案も

県の反論は思いもよらぬものだった。「最高時速260kmの新幹線と在来線の対面乗り換えの所要時間は1時間20分。最高時速200kmのスーパー特急の所要時間は1時間21分で1分しか違わない。必ずしも新幹線がずっと時速260kmで走っているわけではなく、時速200kmのスーパー特急とあまり変わらないでのはないか」。

FGTは時速260km走行を前提に耐久試験を実施したら車軸や軸受に不具合が生じた。山下部長は「時速260kmが無理でも、時速200kmにすれば耐久試験をクリアできるのではないか」と疑問を呈した。時速260kmでも時速200kmでも所要時間があまり変わらないなら、FGTの最高速度を時速200kmに落とす案はどうかということだ。「FGTの技術開発ができなかったのではなく、技術開発をやめただけ。可能性がある以上、検討すべきだ」。国は痛い所を突かれた。

足立課長は、「何千億円のコストをかけ、何十年もかければできるかもしれないが、しかるべき時間とコストで開発するのはむずかしい」とはしたものの、「技術担当部署に確認してみる」と回答した。

県からさらなる提案も出てきた。県議会で出てきた意見だとして、現行の佐賀駅を通るルートに加えて、佐賀駅の南側にある佐賀空港を経由するルート、長崎自動車道沿いを走る北部ルートの3ルートを検討してほしいと要望したのだ。これまで佐賀県は、フル規格は県の財政負担が大きく、在来線の利便性も低下しかねないとしてフル規格に反発してきたが、3ルートを検討したいと要望した。ある意味でフル規格も容認できるとも取れるこの発言は大きな前進である。足立課長は、「フル規格は、需要の取り込みという面から佐賀駅を通るルートが適切と考えているが、北と南のルートも今回提案いただいたので、協議ができるよう準備する」と約束した。

県提案の「空港ルート」

険悪ムードでスタートした今回の協議だったが、県から提案が出て、国も検討すると回答したことで、最後は前向きな雰囲気で約50分の会議が終了した。足立課長は、協議後の報道陣の取材に対し、「佐賀県から提案があったのは進展だと思う」と話した。

現行案の佐賀駅を経由する中央ルートに加えて、佐賀県は、長崎自動車道沿いを走る北ルート、佐賀空港を経由する南ルートの検討を提案した(図:編集部作成)

今回提案が出た南北ルートのうち、南ルートは、JR九州で初代社長を務めた石井幸孝氏がかねて推奨していたルートである。九州新幹線鹿児島ルートとは新鳥栖ではなく筑後船小屋で分岐し、佐賀空港を経由して、肥前山口で在来線付近に合流する。「佐賀駅経由のルートよりも短いので建設コストが割安になる」と石井氏は話す。

国とJR九州は佐賀駅経由ルートは佐賀駅を起点に東西への旅客流動が見込めると考えている。石井氏は「だからといって高収益路線になるわけではない」という。50km程度しか離れていない佐賀駅と博多駅を新幹線で結んでも、高い料金を払って新幹線で行き来する人はあまりいないというのだ。フル規格の場合は新大阪乗り入れによる旅客増も見込めるが、佐賀県の場合、新鳥栖が佐賀駅から22kmしか離れていないため、新鳥栖で十分という見方もある。

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