西九州新幹線「佐賀空港ルート」急浮上の全内幕

佐賀県と国が協議、フリーゲージ時速200km案も

九州新幹線のN700系。西九州ルートの長崎―武雄温泉間には新デザインのN700Sが投入される(写真:Iの肖像/PIXTA)
この記事の画像を見る(4枚)

膠着する九州新幹線西九州ルートの行方に道を開いたのは、1本の電話だった。

博多駅と長崎駅を結ぶ西九州ルートのうち、長崎駅と佐賀県の武雄温泉駅を結ぶ区間は2022年秋に開業するが、佐賀県の新鳥栖―武雄温泉間は未整備のままだ。そのため、国と佐賀県の間で同区間の整備のあり方について議論する「幅広い協議」が昨年6月にスタートした。協議は3回行われたが、新型コロナウイルスの感染拡大で昨年10月を最後に中断していた。

4月は人事の季節である。佐賀県で西九州ルートを担当する地域交流部の部長には新たに山下宗人氏が就いた。国側の担当者である国土交通省鉄道局の足立基成幹線鉄道課長は佐賀県側の担当者交代を受け、早速、挨拶の電話をした。むろん、挨拶だけで済ませるつもりはなく、協議再開を要望するつもりだった。

「早く協議をやりましょう」。電話口で協議の再開について口火を切ったのは山下部長だった。事態を進展させる必要があると考えていたのは国も県も同じだったのだ。

7カ月ぶりの協議再開

こうして約7カ月ぶりの協議が5月31日に開催されることになった。緊急事態宣言が発令中であることから、足立課長は都内にとどまり、ウェブ会議形式で行われることになった。

「鉄道最前線」の記事はツイッターでも配信中!最新情報から最近の話題に関連した記事まで紹介します。フォローはこちらから

協議の直前、県の態度を硬化させる出来事が起きた。整備新幹線について協議する与党の検討委員会は、5月26日の会合で新鳥栖―武雄温泉間について新幹線フル規格での整備を前提とした「検討の方向性」を示したのだ。

西九州ルートは当初、軌間は在来線のまま、諫早ー武雄温泉間の線形を改良することでスピードアップを図るスーパー特急方式で決まっていたが、その後、長崎―武雄温泉間を新幹線フル規格で整備し、在来線と新幹線の両方を走行できるフリーゲージトレイン(FGT)を開発して、武雄温泉―新鳥栖間の在来線区間を走らせることになった。車両開発コストはかかるが、在来線区間の改良工事が最小限で済む。

次ページ「5案」で協議を進めてきたが…
鉄道最前線の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • グローバルアイ
  • 西村直人の乗り物見聞録
  • 最新の週刊東洋経済
トレンドライブラリーAD
人気の動画
東芝、会社「3分割」に残る懸念
東芝、会社「3分割」に残る懸念
節約志向で「安い食品ばかり買う」人の重大盲点
節約志向で「安い食品ばかり買う」人の重大盲点
EVの切り札?夢の「全固体電池」は何がスゴいのか
EVの切り札?夢の「全固体電池」は何がスゴいのか
サイゼリヤが「深夜営業廃止」を決断した裏側
サイゼリヤが「深夜営業廃止」を決断した裏側
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
「非財務」で生きる会社、死ぬ<br>会社 企業価値の新常識

今や株価を決める最大の要因は「非財務情報」というのが世界の常識に。優れた開示を行えば企業価値の向上につながる一方で、開示が不十分だと株を売られるリスクも。企業価値の新常識をめぐる混乱とその対処法に迫りました。

東洋経済education×ICT