アイドルが宝塚歌劇団を超えられない納得の理由 一過性のブームではなく人気が衰えない秘訣
元宝塚総支配人で現在、阪南大学流通学部准教授の森下信雄氏の新刊『宝塚歌劇団の経営学』では、宝塚がいかにしてその人気をサステナィブルなものにしているかの秘密が解き明かされている。
宝塚歌劇団が「アイドル超え」なのはなぜか
宝塚歌劇の女性ファンは、宝塚最大の特徴である、女性が男性を演じる「男役」の「成長」に伴走する経験を重視する。そして特定の男役のファンになった時点から退団までの10年余りの期間を見守る。これがファンの基本的な行動様式である。
舞台に初めて立ったころには未完成な状態だった男役が、公演を重ねるうちに徐々に魅力を開花させていく――ファンにとってはそれを応援できることが重要なのだ、と同書は説く。
とはいえ、同様の楽しみ方自体は、広くアイドルファンにも見られるものだ。社会学者・太田省一が書いた『ニッポン男性アイドル史 一九六〇―二〇一〇年代』でも、アイドルは「歌や踊りが未熟であっても努力して成長する存在」と定義され、ファンはその成長を応援するのだ、と書かれている。
森下氏も2015年に刊行した『元・宝塚総支配人が語る「タカラヅカ」の経営戦略』では2000年代末から2010年代前半にかけて破竹の勢いだったアイドル・AKB48の成功に、宝塚のしくみとの類似を見ていた。
しかし一般的に、アイドルグループの人気は5年、10年はもったとしても、20年、30年にわたって全盛期の水準を持続することはまれである。2021年刊行の『宝塚歌劇団の経営学』では、その後AKBが失速し、一方で宝塚の人気は変わらずであったことに触れている。つまり人気をサスティナブルなものにするためには、「成長を応援できる」に加えて必要な何かがある。それは何か?
無料会員登録はこちら
ログインはこちら