日産「マーチ」、11年が経過しても売れ続ける底力 誕生の歴史や位置づけから売れる理由を探る

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マーチよりもワンクラス大きく、居住性の高さが魅力だったティーダ(写真:日産自動車)

日産には、コンパクトハッチバック車のマーチのほかに、5ナンバー枠に収めたやや大きめの「ティーダ」がかつてあった。これは大衆車として人気を得てきた「サニー」などの車種を補完する目的があったはずだが、ティーダはすでに売られていない。したがって、これまでティーダに乗ってきた人や、マーチよりやや上の車種を期待する人の選択肢は、ノート1台に絞られたことになる。その点では、ノートは消費者の期待に十分応えられる商品性を備えているし、見栄えも含め魅力ある商品力があると思う。

しかし、ティーダに乗っていた私の知人が、結局はノートへの買い替えをしたとはいえ、本心は、ノートのようなワゴン的な車種ではなく、従来型のハッチバック車が希望であったと話している。

ずっと変わらない、それがマーチの本質的な価値

ノートのようなワゴン的な要素を加えたハッチバック車は、輸入車ではアウディのスポーツバックに同様の発想があり、また車格を超えた話ではあるが、SUVのクーペ的な車種の人気も高まっている。

現行マーチのサイドスタイリング(写真:日産自動車)

そのように、複数の魅力を兼ね備えた車種開発が近年の傾向ではあるが、消費者としては、従来どおりのハッチバック車や、あるいは伝統的な4ドアセダンを好む人がまだいるはずだ。そういう消費者に対する選択肢は、自動車メーカーが流行を追う姿勢から狭まっており、そこに日産車での選択肢として、マーチに対する底堅い期待が残されているのではないか。

自動車メーカーの立場からすれば、車種を絞り込みながらより多くの消費者を満足させることが、合理的かつ経営の安定につながるのだろう。しかし、消費者の立場からすれば、従来どおりのクルマを使い続けたいとの希望も残るはずだ。マーチは、そうした消費者の期待に応えるコンパクトハッチバック車として存続しているのだ。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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