「フィット」発売1年、快適さが際立つ通信簿 コンパクトカーらしい実用性を追求したホンダ
4代目のホンダ「フィット」は、昨年2月に発売され、1年が経つ。昨年の販売台数は、一般社団法人日本自動車販売協会連合会の乗用車ブランド通称名別順位で9万8210台と集計され、年間4位となっている。ちょうど発売から1年が経過し、ユーザーの手元に届いたタイミングで、フィットの魅力を今一度評価していきたいと思う。
同じく昨年2月に発売された競合のトヨタ「ヤリス」は、1.5倍以上の15万1766台を販売し、2020年販売台数で堂々の1位となったが、それにはSUV(スポーツ多目的車)の「ヤリスクロス」と、スポーツ仕様の「GRヤリス」も台数に含まれている。同じコンパクトカーになるヤリスのみの販売台数に限定すれば、11万5300台という内訳で、昨年の年間順位3位の位置づけになる。フィットとの差も1万7090台とグッと縮まり、販売台数でヤリスに大きく負けているわけではない。
今年1月の販売台数でフィットは5889台と急に10位へ順位を落としたが、ヤリスもヤリスクロスとGRヤリスを除くと約8180台で実質5位という位置づけとなるので、一通り顧客へ行き渡りつつあるうえでの成績といえるのではないか。
なおかつ、ホンダの販売店数はトヨタの半分以下であり、単純計算はできないが、店舗数が同等と仮定するなら机上では2倍近く売れていたかもしれず、フィットの商品性は十分に評価されていると考えていいだろう。それを踏まえて、フィットの商品価値を考察していく。
センターに燃料タンクを配置した初代フィットの功績
初代フィットは、それまでの「ロゴ」に替えて2001年に誕生した。本田技術研究所の前社長を務めた松本宜之が開発責任者を務め、自ら欧州視察を行い開発した初代フィットは、ホンダ独創のセンター燃料タンク配置を採用するプラットフォームにより、従来のコンパクトカーとは一線を画す商品性を実現した。
通常、燃料タンクは後席下に配置されるが、これを前席下に移動させることにより、後席の座面を持ち上げるチップアップ機構を実現し、これによって後席にも背の高い物を載せることができるようになった。これにどのような意味があるかといえば、ハッチバック車の場合、後ろのゲートを開けて荷物の出し入れをするが、ゲートを開けるためにはクルマの後ろにそれなりの空間が必要になる。あるいはゲートを跳ね上げて開けるために、クルマの上方にも空間が必要だ。狭い場所や天井の低い車庫などでの扱いにくさがある。
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